最新記事

映画

ハイグルのここが鼻につく

『グレイズ・アナトミー』の人気女優で映画『男と女の不都合な真実』も公開中のキャサリン・ハイグルが、急に「イヤな女」に転落した理由

2009年9月24日(木)14時45分
セーラ・ポール

素顔のまま ハイグルが演じるヒロインは両極端(9月18日から公開中の『男と女の不都合な真実』)

 ハリウッドで最もホットなブロンドと呼ばれ、08年1月に男性誌バニティ・フェアの表紙を飾った頃、ドラマ『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』のキャサリン・ハイグルは輝いていた。

 うっすらピンクの白い肌が黒いドレスに映え、眉は知的に弧を描き、リップグロスは完璧。長い手袋をつけて貴婦人のようにほほ笑み、ロールスロイスのハンドルを握る写真とは裏腹に、記事では若くして事故死した兄やモルモン教徒の家で育った少女時代、成功するまでの苦労話を詳しく語る。

 出世作の映画『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(07年)を「ちょっとばかり性差別的」と切り捨て、演じたTVキャスターを「イヤな女」と言ってのける彼女は、男性ファンの目にフレッシュで大胆な女と映ったものだ。こいつ、イケてるじゃないかと。

 それがこの変わりようといったら! たった1年半の間に、ハイグル(30)は人気女優の座から高慢で「イヤな女」へと転落した。

 ウェブサイトではバッシングの真っ盛りだ。「キャサリン・ハイグルが嫌い」は「サンドラ・ブロックが嫌い」を上回るヒット数。芸能サイトTMZは、彼女の仕事は「チェーンスモーキング」で、「夫のジョシュ・ケリーと一緒にいる」時間と同じくらい「たばこを手放さない」とこき下ろす。

『無ケーカクの命中男』のハイグルは好感を持って受け入れられた。ニューヨーク・タイムズ紙でさえ、有能で魅力的な女性を愛らしく演じたと称賛していた。『グレイズ』では瞳が悲しげなイジー・スティーブンス医師を演じ、07年のエミー賞助演女優賞に輝いた。ハイグルは同ドラマの女優陣のなかで最も成功すると期待されていたのだが......。

愛される女優の掟を無視

 突然の人気の陰りの一因は、性差別かもしれない。どんな時代にも、たいてい「大嫌いな女優」として血祭りに上げられるスターがいる(最近の例はジェニファー・ラブ・ヒューイット)。ところが「大嫌いな男優」はいない。

 アメリカ人に愛される女優に求められる暗黙のおきてを、ハイグルはことごとく破っている。たばこを吸って酒を飲み、汚い言葉を使い歯に衣着せぬ俳優はほかにも結構いるが、彼女への反発は特に大きい。

 昨年夏、ハイグルはたばこのぽい捨てを警官に見とがめられた。スター誌はすぐさま、ハイグルは環境の「汚し屋」で、警官に見逃してと迫ったと書いている。

 しかし女だからという以上に、彼女の場合は自業自得だ。『グレイズ』で共演していたイザイア・ワシントンが、同じ共演者のT・R・ナイトを「おかま」と侮辱したとき、ハイグルはナイトを擁護して喝采を浴びた。

 しかしワシントンがドラマを降板させられた後も、ことあるごとにその一件を持ち出した。いつしか世間は、彼女を単なる目立ちたがり屋と思うようになった。

 昨年7月にはエミー賞レースへの参戦を辞退。「今シーズンはエミー賞候補になるような仕事」が与えられていないからだと説明した。脚本家やプロデューサーへの侮辱ではないかと、メディアはその傲慢な態度を非難した。

『グレイズ』のシーズン5で、ハイグルは癌が見つかったイジーを見事に演じたが、今年のエミー賞ではノミネートされなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、1万件減の22.2万件 労働市

ビジネス

「ECB利下げ開始確実」とポルトガル中銀総裁、6月

ビジネス

ECBは利下げ急がず、6月以降は慎重に=ラトビア中

ビジネス

英中銀、利下げ待つべき 物価圧力の緩和確認まで=グ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中