最新記事

自転車

日本攻略を狙い、電動のスポーツバイクが続々と登場するワケ

2017年10月13日(金)18時58分
木皮透庸(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

米スポーツバイクメーカーのTREKが2018年初頭に発売予定の電動アシストクロスバイクの「VERVE+(バーブプラス)」。独ボッシュのモーターユニットを搭載する(写真:トレック・ジャパン)

米国のスポーツバイクブランド「TREK(トレック)」やイタリアの老舗自転車ブランド「Bianchi(ビアンキ)」など欧米4ブランドが2018年以降電動アシスト自転車を日本市場向けに初投入する。トレックは最大航続距離が約100kmのクロスバイク、2011年設立の米国の新興自転車ブランド「Tern(ターン)」は20インチの折り畳み自転車を発売する。独の「corratec(コラテック)」もクロスバイクとMTB(マウンテンバイク)を1車種ずつ投入する。いずれのモデルも価格は20万円を超える。

それらのモーターユニットを供給するのは自動車部品で世界トップの独ボッシュだ。日本ではほとんど知られていないが、同社は電動アシスト自転車向けのモーターやバッテリーでも世界のマーケットリーダーだ。とはいえ、ヤマハ発動機やパナソニックなどの国内メーカーが圧倒的なシェアを誇る日本の電動アシスト自転車市場に飛び込むのはなぜか。

toyokeizai171013-2.jpg

米の新興自転車ブランド「Tern」が日本で2018年3月頃の発売を予定する「Vektron(ヴェクトロン)」。折り畳み自転車に電動アシスト機能搭載は日本では珍しい(写真:アキボウ)

欧州では電動アシスト自転車が大人気

「毎年5%成長している日本市場はとても魅力的だ」

ボッシュの電動アシスト自転車用ユニットのアジア太平洋地域統括を務めるフアド・ベニーニ氏はこう話す。日本の電動アシスト自転車の販売台数は2016年に約55万台。その8割はいわゆる「ママチャリ」と呼ばれるシティサイクルや幼児乗せ自転車だ。

一方、クロスバイクやマウンテンバイク(MTB)、ロードバイクといったスポーツタイプはまだ品ぞろえが少ない。これらの自転車が大半を占める高価格帯(15万円超)の電動アシスト自転車の販売比率はわずか6%だ(2016年、自転車産業振興協会調べ)。

そこにボッシュは商機を見出す。ニッチな市場だが、まだ競争相手が少ない分、のびしろがあると見る。

toyokeizai171013-3.jpg

ボッシュの電動アシスト自転車用ユニットのアジア太平洋地域統括を務めるフアド・ベニーニ氏。持っているのは日本市場に投入する自社製品。自身もMTBの愛好家だが「今ではEバイクのMTBにしか乗れない」と話す(撮影:尾形文繁)

同社のお膝元、欧州ではこの5年ほどで「E-Bike(Eバイク)」と称される電動アシスト自転車市場が急拡大。2016年には約170万台が売れ、前年比2割増ものハイペースで成長を続ける。今や自転車販売全体の1割に迫るEバイクの伸びを牽引するのはスポーツタイプだ。

同社が2012年にEバイク用モーターユニットを市場投入した時には「若い人はEバイクのそばに立っているのも恥ずかしい」(ベニーニ氏)というのが市場の受け止めだった。従来のEバイクは脚力のない高齢者が主な顧客層で、デザインも洗練されておらず、イメージを変える必要があった。

ボッシュはサイクリングを楽しくすることにこだわった。従来の他社製品では自転車の速度が遅い時はアシストが強く、速度が速い時にはアシストが弱くなるため、サイクリストからは「坂道を速いスピードで登っている時こそアシストが欲しい」という要望が出ていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ビジネス

午前の日経平均は大幅続伸、5万円回復 AI株高が押

ワールド

韓国大統領府、再び青瓦台に 週内に移転完了

ビジネス

仏が次世代空母建造へ、シャルル・ドゴール後継 38
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中