最新記事

世界経済

止まらぬ原油安、株安の追い打ちで膨らむリセッション懸念

かつて企業のコスト削減、消費者の家計節約と歓迎された原油価格低下が、今ではデフレ要因と見なされる

2016年1月22日(金)11時54分

1月19日、原油価格はもはや、世界の株式市場にとって、ありがた迷惑な水準まで下がっている。どちらの市場も年初来暴落しており、投資家は1バレル30ドルを割り込んだ原油安がもたらすデフレ効果に警戒感を強めている。写真は13日、ニューヨーク証券取引所のトレーダー(2016年 ロイター/Brendan McDermid)

 原油価格はもはや、世界の株式市場にとって、ありがた迷惑な水準まで下がっている。どちらの市場も年初来暴落しており、投資家は1バレル30ドルを割り込んだ原油安がもたらすデフレ効果に警戒感を強めている。

 この1年半、下降スパイラルに陥った原油価格は75%も値を下げた。そればかりか、昨年末に一段と下落したことにより、今度は株式相場まで巻き添えにしてしまった。

 「原油輸入国にとって、1バレル28ドルは素晴らしいニュースだ」と、オールド・ミューチュアル・グローバル・インベスターズ(香港)のアジア株統括、ジョシュ・ クラブ氏は語る。

 「だが短期的には、センチメントにひどく影響する。つまり、原油安はインフレ面で(低下を招くため)よくない、ということだ。経済にとって非常に多くの問題を生み出している」と同氏は指摘。

 これまで株式市場では、燃料価格の低下は好材料と見られていたが、2016年の市場が悲惨なスタートを迎えるなかで、世界的リセッション(景気後退)の危険性についての悪い噂が浮上してきた。

 「コモディティ価格が総崩れになったのは、ちょっとした需給のアンバランスが原因ではない。それは、世界経済が成長軌道に戻っておらず、リセッションに危険なほど近づいている可能性があるとの考えに基づいている」と、香港の投資リスク管理会社アクシオマでアジア太平洋地域担当のマネージングディレクターを務めるオリビエ・ダシエ氏は説明する。

 米国の景気回復には時間がかかっており、米国企業は2015年第4・四半期に収益のリセッションに陥った可能性がある。

 世界第2の経済大国である中国は、この25年間で最低の成長率を記録したばかりであり、アナリストの予測では2016年はさらに減速すると見られている。

 世界第3位の日本は、たえずリセッションにつきまとわれており、日銀の2%というインフレ目標の達成も依然として遠い先である。

かつての朗報が悲報に

 原油価格低下の恩恵は明らかだ。企業にとってはコスト削減に、消費者にとっては家計の節約になる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 その後急反発

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は前年比7.7倍 全部門

ビジネス

為替、基調的物価に無視できない影響なら政策の判断材

ビジネス

村田製の今期4割の営業増益予想、電池事業で前年に5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中