最新記事

金融規制

銀行の強欲に歯止め、ボルカー・ルール

世界金融危機と金融機関の巨額救済を招いたような投機的取引はこれでなくなるのか

2013年12月11日(水)15時54分
アリソン・ジャクソン

当事者 金融危機の火消しに奔走したバーナンキFRB議長も新ルールに賛成 Jonathan Ernst-Reuters

 アメリカの金融監督当局は昨日、銀行の自己勘定売買や投機的取引を規制する「ボルカー・ルール」を承認した。これは、08年の金融危機を招き、その後の公的資金投入による銀行救済につながったリスクの高い取引を規制するものだ。

 ボルカー・ルールは、10年の金融規制改革法(ドッド・フランク法)の根幹をなす条項だ。ドッド・フランク法はここ数十年で最悪の景気後退の引き金となった08年リーマン・ショック後に制定された。

 金融改革を推進した米連邦準備制度理事会(FRB)の元議長、ポール・ボルカーにちなみ名づけられた「ボルカー・ルール」は、銀行(例えばJPモルガンやモルガン・スタンレー)が自己勘定取引などリスクの高い投資手法を禁止する内容だ。

 自己勘定による債券売買取引などは銀行にとって多大な利益を生み出す反面、市場がいったんパニックに陥ると損失も大きく、そのツケをアメリカの納税者が負担する事態になった反省からだ。
 
 FRBと連邦預金保険公社(FDIC)は満場一致でボルカー・ルールの最終版を承認したが、米証券取引委員会(SEC)は3対2の僅差、米商品先物取引委員会(CFTC)は3対1で承認にこぎつけた。

 すでに、自己勘定取引を止めた銀行も出てきている。

 ボルカー・ルールでは、銀行がヘッジファンドや未公開株に投資することも制限している。リスクの高い投資に対する新たな規則により、投資額が銀行の中核資本の3%を超えてはならないことになる。

「ポートフォリオ・ヘッジ」と呼ばれる、銀行が損失リスク回避のために幅広い投資先を設定することも禁止しようとしている。 損失のリスクを回避することは、銀行にとって当然の業務だが、それが実は、価格が下がると儲かる仕組みの投資の隠れ蓑であることも多かったからだ。

 どこまでが合法でどこからが非合法なのか、その定義を詰めるところがボルカー・ルールの制定上で大きな障害になってきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中