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インド「弱者を救う銀行」に迫る危機

インド版サブプライム危機に発展する恐れも? 貧困層に小口融資を行うマイクロファイナンスが「機能不全」に陥りつつある

2010年12月6日(月)13時43分
藤田岳人(本誌記者)

貧困層の希望 マイクロファイナンスを利用して、ムンバイのスラム街でアクセサリーを作る仕事を始めた女性(2010年10月) Danish Siddiqui-Reuters

 銀行融資を受けられない貧しい人々にとって、マイクロファイナンス(無担保小口融資)は貧困から抜け出すための希望の光。貧困層向けに1口数百ドルの融資を専門に行う金融機関は、今や途上国だけでなく欧米でも大きな成長を遂げている。

 しかし、マイクロファイナンスの市場規模が65億ドルを超えるインドで、この融資事業は深刻な危機に立たされている。震源地は、こうした融資を受ける貧困層の3分の1が暮らす南部のアンドラプラデシュ州。州政府は10月、マイクロファイナンス事業者に対する厳格な新規制を施行。貸出金利に上限を設け、週1回の返済期日を月1回に改め、返済は政府が定める場所で行うことを義務付けた。

 規制強化の背景には、一部業者による悪質な貸し付けと取り立てへの強い反発がある。

 業者は借り手の返済能力を調査することなく高金利で融資し、返済が滞ると過酷な取り立てに走る。貧しい借り手は悪循環になると知りつつも、別の業者から借金を重ねるようになる。州内では借金苦で自殺者が数十人も出る事態に発展していた。

 一方、弱者の味方だったマイクロファイナンスは膨大な利益を上げる事業に変貌し、急成長を続けてきた。国内最大手SKSは8月、新規株式公開で3億5000万ドル以上をかき集めた。

 しかしこのビジネスモデルも終わりを迎えたかもしれない。規制の施行後、SKSなどは貸出金利を年率31%から24%に引き下げざるを得なくなり、同州のマイクロファイナンスによる融資総額約20億ドルの返済は実質的にストップ。債権回収率は一時20%を切った。

 こうした事態に各社の株価は軒並み急落。1日で20%近く下落した業者もある。先週には国内の格付け会社が、SKSなどが発行する社債やコマーシャルペーパーの格付け引き下げを示唆した。同様の規制が全国に広がる気配を見せるなか、マイクロファイナンス事業の運営が厳しくなるのは必至だろう。

 懸念されるのは、事業者にとって主な資金調達先である大手銀行に影響が及び、インド版サブプライム危機に発展すること。しかし、銀行の被害はさほど大きくなさそうだ。銀行の貸付残高のうち、マイクロファイナンス向けは1%未満。インド準備銀行(中央銀行)も「金融システムに影響はない」としている。

 どうやら新規制の最大の被害者は、融資のチャンスを失う貧困層らしい。

[2010年12月 8日号掲載]

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