zzzzz

最新記事

ビジネス

スタバを出し抜いた「おうちカフェ」

一世を風靡した「ラテ」や「ヴェンティ」はもう落ち目。かつて熾烈を極めたコーヒー戦争の末の意外な勝者とは

2010年9月15日(水)18時55分
ジェイソン・ノッテ

問われるバリュー スターバックスもマクドナルドも負け組 Reuters

 覚えているだろうか。スターバックスの客がエリート志向と言われ、ダンキンドーナツの常連は「ラテ」や「ヴェンティ」といった外国風の呼び名を皮肉り、マクドナルドのコーヒーが突如として高級に変身した、あの頃を。ありがたいことに、大手が火花を散らしたコーヒー戦争はいったん終息したようだ。でも結局、勝ったのは誰なのか?

 それはバリスタでも、カフェイン漬けの常連客でもない。自宅で入れたカップ1杯のコーヒーを持って通勤する普通の人々だ。

 コーヒー戦争の引き金になったのは、王者スターバックスの低迷だ。同社は09年、業績の振るわない米国内の600店舗を閉鎖。今年1月にはさらに300店舗を閉じ、7000人近い人員削減を行うことを発表した。

 チャンスをかぎつけたマクドナルドやダンキンドーナツなど競合他社は、宣伝を強化して戦略も転換。マクドナルドはグルメ志向のコーヒー関連商品「マックカフェ」を売り出し、店舗もコーヒーカウンターやテレビ画面などを備えた内装に変え始めた。

 09年9月の会計年度末までに、スターバックスの収益は6%近く低下。同一店内での売り上げは9%下落した。

 かといって、マクドナルドの業績も芳しくない。収益はアメリカ国内外で7%下落。スターバックスのフラペチーノに対抗した「フラッペ」の売り上げが好調で、4〜6月期の収益は12%上昇したものの、コーヒーからはいくぶん重点を移し始めた。代わって、スムージー専門のチェーン店ジャンバ・ジュースを攻撃するかのように、この夏からスムージーの販売に乗り出したのだ。

 ではコーヒーで収益を上げたのはいったい誰なのか? バーモント州に拠点を置くコーヒー卸売り大手のグリーン・マウンテン・コーヒー・ロースター(GMCR)に聞いてみるといい。同社はマクドナルドが店舗や広告に莫大な費用をつぎ込むのを喜んで眺めている。

家でコーヒー派が4%増加

 グリーン・マウンテンは、家庭用コーヒーメーカー大手キューリグからライセンスを受けて販売するコーヒーメーカー用のカートリッジ「Kカップ」で大成功を収めた。オーガニックコーヒー販売ニューマンズ・オウンやタリーズ、カリブ・コーヒーなどのコーヒーチェーン大手とも提携を結び、過去3年間で毎年56%近い成長を遂げた。

 結局、コーヒー好きは「コーヒー店品質の家庭用コーヒー」を選んだということだ。全米コーヒー協会の今年の消費動向調査によると、家でコーヒーをいれるというアメリカ人は86%で、前年から4%増加した。

 同調査によれば、コーヒーを飲むアメリカ人のうち、経済的な理由でコーヒーの飲み方を変えたという人は16%。消費されるコーヒーのうち40%が高級コーヒーであることからも、自宅で高級コーヒーを飲む消費者がかなり多いことがうかがえる。コーヒー専門店から家庭用コーヒーへのシフトが起きているようだ。

 ミネアポリスに拠点を置くカリブ・コーヒーの場合、09年は同一店舗での前年比売り上げが2・3%落ち込むなか、カートリッジのKカップを含む商品売り上げは42・4%に急増。こうした売り上げが総売り上げに占める割合も4%に拡大した。今年の4〜6月期も、商品売り上げの成長率(51%)が店内飲食の売り上げの成長率(4・4%)をはるかに上回った。

 同じことがサンフランシスコに拠点を置くピーツ・コーヒー&ティーにもいえる。同社は192の店舗しか持たず、純売上高の35%近くを商品販売と宅配が占めている。09年の店内飲食の売り上げは7%増だったが、商品販売と宅配の売り上げはその倍近い成長を記録した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界

ワールド

イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマス

ビジネス

米国株式市場=ダウ急反発、574ドル高 インフレ指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    F-16はまだか?スウェーデン製グリペン戦闘機の引き渡しも一時停止に

  • 2

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 3

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する、もう1つの『白雪姫』とは

  • 4

    インドで「性暴力を受けた」、旅行者の告発が相次ぐ.…

  • 5

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 6

    「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...…

  • 7

    「集中力続かない」「ミスが増えた」...メンタル不調…

  • 8

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 9

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「…

  • 10

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中