最新記事
ウクライナ情勢

F-16はまだか?スウェーデン製グリペン戦闘機の引き渡しも一時停止に

Sweden Delays Gripen Jets to Ukraine: How Does Fighter Compare to F-1

2024年5月30日(木)12時52分
ジーザス・メサ

スウェーデン製のグリペン戦闘機は、速度マッハ2、高度5万フィートまで飛ぶ SAAB

<ウクライナ東部で激しい空爆を続けるロシア軍に対し、ほとんどなすすべがないように見えるウクライナ。西側の戦闘機はいったいいつ届くのか>

ウクライナ戦争における空の戦いでロシア軍は依然として優勢を維持している。だが、これに対抗するためのF-16戦闘機はいまだに届かない。その上、近く最新鋭戦闘機グリペンをウクライナに供与するはずだったスウェーデンは、計画を一時中止すると発表した。

【動画】究極の戦闘機F16と、トップガン・マーヴェリックのSU-57とのドッグファイト

スウェーデン政府関係者によれば、同国製のグリペン戦闘機の引き渡しを一時停止するのは、F-16戦闘機の供与が円滑に進むようにするためだという。

「F-16提供に関する国々から、グリペンの供与を待つよう要請された」と、スウェーデンのポール・ヨンソン国防相は28日に明かした。「ウクライナは今、F-16を受け入れるプログラムの実施に集中すべきだ」

newsweekjp_20240530031928.jpg
F-16 REUTERS

グリペンは最も近代的な西側製戦闘機のひとつであり、機動性ではロシアのスホーイやミコヤンに対抗できるだろう。だがウクライナは、ロシア空軍の航空戦力に対抗するには、少なくとも現時点では、F-16を優先すると決定したという。

アメリカ製F-16戦闘機は、ウクライナ軍で酷使されてきたMiG(ミグ)-29、Su(スホーイ)-24、Su-25に取って代わることになる。いずれも冷戦時代に登場したジェット機で、その性能はロシア側も熟知している。

F-16のパイロットの訓練には6カ月から8カ月かかると見積もられており、ベルギーが30機、デンマークが19機を数週間以内に移送する予定。オランダも同様のスケジュールを計画している。だがそのスケジュールは早まるより後ずれしがちだ。

汎用性の高さが魅力

F-16の操縦をマスターした後に、ウクライナがスウェーデンから受け取るかもしれないグリペン戦闘機について、現在わかっていることは以下の通り。

スウェーデンのサーブ社が開発したJAS 39グリペンは、1996年に登場して以来、さまざまな国の空軍に不可欠な存在となっている。敏捷性とコストパフォーマンスの高さで知られており、ブラジル、チェコ共和国、ハンガリー、南アフリカ、タイで使用されている。

軽量の多用途戦闘機として設計されたグリペンは、先進的なアビオニクス、レーダー、兵器システムを組み合わせ、メンテナンスの容易さ、迅速なターンアラウンド、運用の柔軟性で際立っている。さらに、多様なミッション・シナリオで効果的に機能できる。

最大速度はマッハ2(時速約2400キロ)以上、高度15000メートルまで上昇できる。内部燃料を使用した場合の戦闘半径は約800キロ、外部タンクを使用した場合の運航航続距離は約3700キロに達する。

グリペンにはPS-05/AやレイヴンES-05 AESAレーダーのような先進的なレーダーシステムが搭載されており、空中と地上の両方で複数の目標を高い精度で追跡することができる。また、空対空ミサイル、空対地弾、精密誘導爆弾など、さまざまな兵器を搭載できる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃伴う演習開始 港湾など封

ビジネス

韓国クーパン、顧客情報大量流出で11.8億ドルの補

ワールド

尹前大統領の妻、金品見返りに国政介入 韓国特別検が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中