コラム

ウクライナ国民はしらけムード、トランプ和平交渉への冷めた本音

2025年05月21日(水)17時00分
ゼレンスキー

トルコで待ちぼうけに遭ったエルドアン(右)とゼレンスキー両大統領 UKRAINE PRESIDENTIAL PRESS OFFICE HANDOUTーEYEPRESSーREUTERS

<ロシア側には戦闘を停止すべき理由がない...ロシア人が「既に勝った」と考える訳>

開戦4年目に入ったウクライナ戦争をめぐり、ウクライナ人とロシア人の意見が一致していることが1つある。5月16日のトルコでの直接協議で事態が劇的に改善する見込みはないという点だ。ただし、理由は大きく異なる。

ロシア人がそう考えるのは、ロシア側に戦闘を停止する確たる理由がないからだ。「戦争がどんな形で終わろうと、(ロシアの)プーチン大統領は画期的成果を上げた。今のアメリカはヨーロッパよりロシアに近づいているように見える。民主化と文化の力というお題目も取り下げた」と、あるロシア人の知人は言う。


私が初めてロシアに行ったのは2011年。数年後、ロシア政府はアメリカとの高校生の交換留学や人権NGO支援といった「ソフトパワー」関連プロジェクトを次々に停止。アメリカ側の猛反発を招いた。

「今のアメリカはロシアの立場を模倣し、世界中に広めている。プーチンがトルコでの協議を呼びかけながら、自分は参加しないと分かっても、トランプは非難せず、(プーチンとの)会談を模索している。(この勝負は)ロシアの勝ちだ」

別のロシアの知人は、停戦に消極的なプーチンの姿勢は全く意外ではないと語った。「アメリカとはまだ友人ではないにせよ、間違いなく敵ではない。ロシアは基本的に関税の適用を免除されているし、トランプはロシアに対するサイバー活動を停止させると言っている」。この知人は、戦争によって新たな富を得たエリート層が戦闘継続を強く支持しているとも指摘した。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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