コラム

イチロー選手は復活するのか?

2011年09月21日(水)13時28分

 イチロー選手はオリックス時代こそ、レギュラーに定着してからは5年連続首位打者を獲得するなどコンスタントに才能を発揮していますが、マリナーズに移籍してからは何度か打撃の不調に陥っています。2003年の春、2005年の夏などがそうですが、そうした不調を跳ね返してシーズン通しでの成績は最高レベルを維持してきています。例えば、WBC後に体調不良となってシーズンのスタートが出遅れた2009年などは、かなり多くのファンが心配しましたが、結果的に素晴らしい成績を残しています。

 ですが、今年、2011年は大きく調子を落とし、このままでは打撃成績としてはマリナーズ移籍以降で最低のシーズンとなりそうです。私は「連続200本安打記録」をあまり評価していません(それより優勝への貢献や高出塁率が大事なので)が、この記録にしても現時点では残り9試合で24本が必要ということで、苦しくなりました。どこか少年の面影を残したこの天才打者も今年の10月には38歳、さすがに年齢には勝てないのでは、そんな声が大きく聞かれます。

 では、このままイチロー選手は野球選手としての「晩年」に入るのでしょうか?5年の大型契約が終わる来季が1つのメドとなって、移籍や引退の話が出るのでしょうか?その翌年の2013年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、もしかしたら選手ではなく、指導者としての参加になるのでしょうか?その前に「イチローのいないWBC」にはジャパンマネーが激減して、大会自体が雲散霧消になる、そんな危険もあるかもしれません。

 以降は、私の全く個人的な推測ですが、「そんなことはない」と思うのです。

 理由は単純で、イチロー選手の衰えは「視力低下」であり、正確な検眼を行ってコンタクトレンズを着用すれば選手としては復活可能だと思うからです。

 どうしてそう考えるのか? 1つは、今年の成績に妙な点があることです。まず今季は、定評のあった外野守備に一気に翳りが見えています。エラーこそ少ないものの、ファインプレーは少なくなり、統計的にも守備範囲が狭く、守備貢献度のデータが平均的な外野手を下回っています。昨季まで10年続けたゴールデングラブ賞もほぼ絶望でしょう。一般的には「守備にスランプなし」と言われることから考えても、何か異変が起きているのは間違いありません。

 一方で、奇妙なのは盗塁は決して減っていない、それどころか春先のスタートダッシュの際には、過去のシーズンを上回る盗塁を決めていたのです。走力は落ちていないのです。つまり、打撃と守備は一気にダウンしたが、走力は衰えていないわけです。

 そこで疑われるのは視力です。私は急激な視力低下が起きているのではと考えましたが、信頼できる眼科医の知人に聞いたところ、近視や乱視という変化は緩慢なものであり、一年で急に起こるということはないそうです。仮に本当に突然の視力低下が起きているのであれば、ブドウ膜炎などもっと深刻な病気が疑われますが、さすがにメジャーリーグの健康管理体制でそうした症状を見逃すことはないでしょう。

 となれば、考えられるのは次のようなストーリーです。イチロー選手は恐らくは近視で、以前から少しずつ視力が低下していたのだと思われます。ただ急にコンタクトで矯正をすると微妙なカンが狂うので、ずっと裸眼で過ごしてきたものの、今年になって「ある臨界点を越えて」しまい、それが打撃にも守備にも影響したという仮説です。イチロー選手は動体視力が優れていると言われますが、動体視力だけが急に低下するというのも奇妙な話で、近視である可能性が濃いと思うのです。

 仮にそうであれば、シーズンオフに優秀な眼科医に検眼をしてもらい、コンタクトを処方してもらって、その上でトレーニング・パートナーと一緒にコンタクトを使用しての練習をしっかり行なって来季に備えればいいのではないでしょうか? 楽観的に過ぎる見方ですが、もしもこの仮説が正しいのであれば、来季は2010年までのように、俊足好守の外野手として復活すると思います。

 以上は私の全く個人的な仮説です。ですが、仮にそうでない場合は、仮に200安打の連続記録から「自由」になったとして、1番ではなく、3番バッターとして打率と打点の向上を中心に、優勝できるチームを牽引するというのがいいと思います。これまでのキャリアではチャンスのなかった経験をして、時には堂々と四球を選びながら勝負強さとリーダーシップを発揮し、常に雑音を発してきたシアトルの一部「アンチ・イチロー」の野球ジャーナリストを黙らせるというのも、「殿堂入りの約束された」存在としては必要だからです。

 いずれにしても、チームは消化試合モードに入っている中で、メジャーへ上がれるかどうかのギリギリの線にいる若手を起用したり、来季構想のための情報収集を中心に残りの試合を戦っている状況です。ということは、「200本」へのチャレンジをするベストな環境でもないわけで、応援する方も来季を見据えることが大事だと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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