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【写真特集】大英帝国支配の爪痕 ニュージーランドに遺る産業の残照
THE AFTERGLOW OF INDUSTRY
Photographs by CHRIS CORSON-SCOTT

『崩落した窯』 マケオア石灰工場、南島オタゴ地方ブルーマウンテンズ (2016年)/ニュージーランド政府は1898年、マケオアに石灰鉱山を設立した。農業用石灰肥料の利用を促進する目的もあった。20世紀初頭に効率性の高い焼成窯が導入されたが、戦後は別の現代的な工場に置き換えられた
<南半球の自然豊かな多民族国家・ニュージーランド。写真家・クリス・スコット・コーソンが、新作写真集「産業の残照」で、大英帝国による植民地化と産業開発の遺構を訪ね、その歴史を紐解く。1つ1つレンガを積んだ人々の人生は何をなしたのだろうか>
土地は歴史を宿している。その土地に生きた人々の記憶、土地をめぐる戦い、採掘された資源、進行中の気候変動、そして人間の本質までが刻み込まれている。土地から人々は過去を理解し、不確かな現在を理解しようと試みる。
ニュージーランドの写真家クリス・コーソン・スコットは14年の歳月をかけ、ニュージーランドの地で現在まで200年にわたって繰り広げられた大英帝国の植民地化と産業開発の遺産の姿を記録にとどめ、写真集「Afterglow of Industry (産業の残照)New Zealnd Photographs 2012-2022"」(デイライト社刊)にまとめた。
撮影したのは、山岳地帯・熱帯雨林・海岸線で既に廃墟となったものから、大都市・集落に残されたものまでさまざまだ。それぞれの産業遺産についてスコットは、先住民族マオリの歴史、植民地化・産業振興の歴史、さらには近年の脱工業化の進行やニュージーランドの観光地としての再ブランド化まで深く考察した。
プロジェクトのあとがきでスコットは書いている。「この地が植民地として産業化された歴史を、少しでも理解する試みだ。街で最も影響力のある建造物が廃墟になることは何を意味するのか?一つ一つレンガを積んだ人々の人生は何をなしたのか?」
The Afterglow of Industry:
New Zealand photographs 2012-2022
ISBN-13: 9781954119451
180 ページ; 写真79点
12.6 x 10.5 インチ
デイライト社刊
次ページ:【写真特集】大英帝国の支配が遺した産業の残照 写真集「Afterglow of Industry:New Zealand photographs 2012-2022」から作品紹介
Photographs from "Afterglow of Industry: New Zealand Photographs 2012-2022" by Chris Corson-Scott, published by Daylight Books
撮影:クリス・コーソン・スコット
ニュージーランド出身のアーティスト。作品は40を超える美術館やギャラリーで展示され、ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ、オークランド美術館 トイ・オ・タマキなどで収蔵。本作は新刊写真集『Afterglow of Industry :New Zealnd Photographs 2012-2022』(デイライト社刊)に収録
【連載21周年/1000回突破】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2025年9月9日号掲載
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