コラム

この株価暴落はブラックマンデー2.0だ

2018年02月07日(水)07時47分

それは明らかな間違い、あるいは逃げ場を身内に与えるための確信犯的な誤りで、メルトアップのあとは、言葉の定義上、必ずメルトダウンするのだ。そして、それこそが、前述したように、相場の真理なのである。そして、その真理は、私が主張しても聞き入れられなかったが(ご関心のある方は私の個人ブログ参照)、現実がすぐに示してくれた。

今回の下落は何か、という様々な解説がなされている。要は、雇用統計で賃金が上がりすぎていたからインフレ懸念、そして利上げ懸念、その結果長期利子率が上昇したこと、というのが一般的だ。これが間違っているのは、前述したとおりで、先週金曜日の米国市場はそうだったが、昨日月曜日は長期金利は急低下し、リスクオフとなった。また、先週金曜日は円高にならなかったから、リスクオフではない、という解説が多かったが、その解説が間違いですよと教えるかのように、昨日今日は円が急騰した。これもよくある話で、市場の動きが理屈に合わないときは、理屈が合っていて、現実があとから追いついてくる。

つまり、市場関係者の解説は先週金曜日の時点のものはすべて間違いであることが、月曜、火曜で現実により示されたが、火曜日時点でなされている、もっともらしい下落の解説も間違いであることが、今後、現実によって示されていくであろう。

すなわち、下落した理由はただ一つ。上がりすぎたから暴落した。それだけのことで、それ以外の理由は何もないのである。

理由は何でもよかった

上がりすぎたから、みんなもうそろそろ売りたい。しかし、欲張りだから、まだ上がるかもしれないと思っている。全員が売るタイミングを待ち構えている。そこへ、賃金上昇だろうが金利懸念だろうが、理由は何でも良く、大きく下落が始まった。すわ売り時、とみなが売りに殺到した。それだけのことである。

日本株も今年になって上がりすぎていた。だから、一気に暴落したのである。

ビットコインなどの仮想通貨も同じである。コインチェックの事件はきっかけに過ぎず、まだ上がるかな、でももう売りたいな、でももっと上がるかも、下がったらいやだな、と思っていたところに、一気に売りがきて、それが売りが売りを呼んで大暴落になっているのである。

一つの大きな違いは、仮想通貨は、投機初心者が多いため、不安が渦巻く中での暴落であり、恐怖感があり、今後も一気に下落していくだろう。一方、株式市場は、余りに上がりすぎだ、というのは暴落前からの共通認識だったから(高すぎるとはいえない、と自己弁護し続けた市場関係者は確信犯で、上がりすぎだな、と思いつつ、上がりすぎだが、高すぎるとも言い切れない、というロジックを、上がりすぎだな、という前段には触れずに説明していたのである)、あまり恐怖感のない、静かな、というか、日常風景を眺めているような下落だ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story