最新記事
シリーズ日本再発見

世界49カ国・地域にまで広まった「文化を超える」公文式

2016年07月13日(水)16時22分
西山 亨

写真提供:公文教育研究会

<子どもの主体性を引き出すために生まれたKUMON(公文式)は、1974年に海外初展開。今では海外だけで8400教室を展開し、学習者数はすでに国内を凌駕している。世界中で支持されている理由は「日本の教育法だから」ではなく、国や文化の違いを問わない普遍的なノウハウと教育理念にあった> (写真は、ブラジルでの学習風景)

【シリーズ】日本再発見「世界で支持される日本式サービス」

 英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによる世界大学ランキングは、上位を米英の大学が占めており、日本は東京大学の43位が最高順位(2015-2016年)だ。日本の高等教育は残念ながら国際的に見て高い水準とは言えない。だが一方で、米英を含め、世界中で支持されている日本生まれの教育法がある。KUMON(公文式)である。

 公文式は1958年、高校の数学教師だった創始者の公文公(くもん・とおる)氏が、小学生の息子のために算数の教材を手づくりしたことがきっかけで生まれた。自分の力にあった教材を、自分のペースで進め、自分の力で問題を解いていくことで、子どものやる気や可能性を最大限に引き出すことを目的としている。

 海外展開の歴史も古い。初の海外教室は1974年のニューヨーク。日本で子どもを公文式の教室に通わせていた家族がニューヨークへ転勤になり、その際に母親から、引き続き学ばせたいと相談されたのがきっかけだった。その結果、母親に指導者になってもらうことで現地に算数・数学教室を開設。当初はニューヨークに住む日本人の子どもたちを相手にしていたが、公文式の評判が広まるに従って、現地の子どもたちも生徒として通うようになった。

【参考記事】数学の「できない子」を強制的に生み出す日本の教育

 この経緯からもわかる通り、公文式の特徴のひとつは、口コミによってその魅力が伝わっていったことだろう。その後も学習者数は増え続け、今では日本を含めて49の国と地域で、約427万人が学習している。このうち、国内が約151万人に対して海外は約276万人を数える。すでに海外のほうが上回っているのだ。

japan160713-1.jpg

インドネシアでの学習風景(写真提供:公文教育研究会)

子どもたちの変化や成長が共感をもたらす

 公文式が世界的に知られるようになる契機は、1988年に訪れた。アメリカ・アラバマ州の公立小学校であるサミトン校からの強い申し入れによって、算数の授業に公文式が導入されたところ、わずか数カ月で目覚ましい効果を発揮したのだ。ニューズウィーク英語版など多くのメディアが「サミトンの奇跡」として報道したことで、世界中から教室を開きたいという問い合わせが殺到した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中韓首脳会合、中国首相「新たな始まり」 貿易など

ビジネス

景気「足踏みも緩やかに回復」で据え置き、生産など上

ビジネス

フランス、EU資本市場の統合推進 新興企業の資金調

ビジネス

3月改定景気動向指数、一致指数は前月比+2.1ポイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 9

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 10

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中