最新記事
北朝鮮情勢

【衛星画像】北朝鮮、寧辺の核施設で核開発を加速

North Korea Satellite Images Raise New Nuclear Fears

2024年5月27日(月)15時57分
マーサ・マクハーディ

新型の地対艦ミサイルの発射実験を視察する金正恩(2月18日、場所不明) KCNA via REUTERS 

<原子炉の冷却水の排出や実験施設からの熱の放出を示す衛星画像が捉えられた>

北朝鮮問題専門のニュースサイト「デイリーNK」によると、北朝鮮がプルトニウムやウランを生成している可能性を示唆する衛星画像が撮影された。

商用衛星画像のマクアーが撮影したもので、そこからは、平安北道にある寧辺(ニョンビョン)の核施設の活動が活発になっていることがうかがえるという。アメリカは寧辺にあるウラン濃縮プラントの閉鎖を目指し、北朝鮮に経済制裁で圧力をかけている。

【動画】中央幹部学校の室内に掲げられている3人の肖像画

5月14日に撮影された高解像度の熱赤外線画像からは、原子炉を冷やすための冷却水が近くの川に放出されていることがうかがえる(下の図の黄色の部分)と、デイリーNKは伝えている。冷却水の放出は今年に入って11回目だという。

熱赤外線画像からはまた、放射化学実験施設とウラン濃縮施設からの高エネルギーの放出も認められた。これらの施設が活動している可能性が高いということだ。

アメリカの地球観測衛星ランドサット8が捉えた熱赤外線画像で寧辺における温度分布が13〜28度となっていることからも、核施設での活動が活発化していることがうかがえる。ここにある放射化学の実験施設とウラン濃縮施設の熱が高くなっているということは、使用済み核燃料からのプルトニウムの回収や、高濃縮ウランの製造が行われている可能性を示唆している。

マクアーは2021年9月にも、北朝鮮が寧辺の核施設を拡張していることを示す衛星画像を撮影している。

ミサイル発射実験も

2021年当時、核不拡散の専門家であるミドルベリー国際大学院のジェフリー・ルイス教授はCNNに対し、施設の拡張により北朝鮮の核兵器に転用可能なレベルの濃縮ウランの製造能力は最大で25%高まる可能性があると指摘していた。

「直近の寧辺における(核施設の)拡張は、兵器製造用の核物質の生産を増やす計画があることを示している」とルイスは述べた。またルイスによれば、寧辺ではこれに先立ち、施設の床面積の拡張も行われていたという。これにより遠心分離機の設置数を増やし、年単位で濃縮ウランの製造量を増やす計画かもしれない。

その直前、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は、北朝鮮がかつて核兵器用のプルトニウム製造に使っていたと見られる原子炉を再稼働したことを示す「非常に気がかりな」徴候を捉えたとの報告を行った。

「北朝鮮による核計画の継続が国連安保理決議違反であることは明らかで、非常に遺憾である」グロッシは述べた。

同じく2019年、北朝鮮はアメリカに対し、寧辺の核施設を廃棄する見返りとして制裁の全面解除(大量破壊兵器そのものに対するものを除く)を求める提案を行ったが、合意には至らなかった。

寧辺の核施設における活動を活発化させる一方で北朝鮮は、東倉里(トンチャリ)のミサイル発射場で、ミサイル発射実験やロケットのエンジン燃焼実験を行っている。金正恩総書記が核兵器の製造を加速させているのは明らかなようだ。

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は続落、米雇用統計前の警戒ムード 一

ビジネス

経済同友会の代表幹事に山口・日本IBM社長、新浪氏

ワールド

台湾総統、財政関連法改正に反対 野党主導の議会と溝

ワールド

スイス、26年成長予想を1.1%に上方修正 米関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中