コラム

退職者が続出する企業には「セルフ・キャリアドック」が必要だ

2019年01月11日(金)15時25分

takasuu-iStock.

<採用が難しいので、せめて退職者を減らしたいのに、なかなか定着しない......。人と企業の関係が大きく変わろうとする中で、プロのキャリアコンサルタントによる「人間ドック」が注目を集め始めている>

企業の経営者にとって、人材確保が重要課題になっている。新卒、中途ともに、本当に自社で活躍できそうな人を見つけ出し、入社してもらうまでステップを進めていくには、相当なパワーとコストが掛かるからだ。

そのため、今いる従業員にいかに定着してもらうかという意識も高まっている。「リテンションマネジメント」と呼ばれるが、つまりは、優秀な人材が長期に渡り高い能力を発揮し続けてくれるように、就業環境を整備するなどの具体的な施策の導入がますます熱を帯びている。言い換えれば、退職者をできるだけ減らすための施策だ。

会社まで毎日通わなくてもよいように「サテライトオフィス」を整備したり、「副業・兼業」を認めたりというのも、リテンションマネジメントの一種。働き方改革と相まって、いま、人と企業の関係が大きく変わろうとしている。

そんな中、徐々に注目を集め始めているのが「セルフ・キャリアドック」だ。一般にはまだ知られていないが、厚生労働省が推進する制度で、定期的に、従業員自身に今後のキャリアや将来について考えてもらう仕組みを言う。健康状態を知るために「人間ドック」を定期的に受けるようなニュアンスだ。

このセルフ・キャリアドックとは、一体どんな制度なのか。そして退職防止にどうつながるのだろうか。

この種のテーマには、必ず2つの視点が必要になる。1つは、経営者の視点。もう1つが、働く側の視点だ。経営者としては、辞めないでほしいと願っても、従業員の側もここに居たいと思わなければ成立しない。

25歳以下の退職理由の26%は「やりたい仕事ではなかった」

そもそも、人が辞めることを決意する際の理由は何なのか。

人材会社のエン・ジャパンが昨年4月に公表した「退職のきっかけ」についての調査では、第1位は「給与が低かった」(39%)、第2位「やりがい・達成感を感じない」(36%)、第3位「企業の将来性に疑問を感じた」(35%)という結果だった。

一方、年代別でみると、25歳以下は「やりたい仕事ではなかった」が26%と、他の年代に比べて突出して高い。

「作っているものが、何に使われてどのように活躍しているのか教えてもらえず。いきなり仕事の手順だけ覚えさせられてやりがいもなく、自分が成長できないと思った」(23歳男性)、「社会に貢献しようと言うが、会社が見ているのは目の前の利益ばかり追求していると思ったため」(24歳男性)というコメントも紹介されている。

つまり、経営者視点と働く側の視点では、物事の受け止め方に大きなギャップがあるということだ。一番もったいないのは、このギャップを埋められずに人が辞めていく時である。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、見通しさえず株下落 第4四半期は予想上回

ワールド

米裁判所、マスク氏訴訟の手続き保留を決定 大統領選

ワールド

北朝鮮、31日発射は最新ICBM「火星19」 最終

ワールド

原油先物、引け後2ドル超上昇 イランがイスラエル攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    自爆型ドローン「スイッチブレード」がロシアの防空…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 8
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story