コラム

【徹底解説】DeepSeek革命のすべて

2025年02月15日(土)12時34分

梁文鋒は高速取引を行うためにAIに関心を持ち、2021年までに10億元を投じてエヌビディアのA100を1万個以上も購入した。2023年5月に社内にAIチームを立ち上げ、これをDeepSeekと称した。

DeepSeekが業界の注目を集めたのは2024年5月に発表したDeepSeek-V2による。この段階ですでにMulti-head latent attention とDeepSeekMoEというDeepSeekの独自技術が使われていた(DeepSeek-AI, 2024)。

DeepSeekで特筆すべき点は開発した生成AIがすべてオープンソースになっていることである。DeepSeek-V3のファイルサイズは700GBと大きいものの、ユーザーはそれをダウンロードして使ったり、改良したりすることができる(The Economist, 2025)。

そればかりか、その技術に関する詳細な論文が公開されており、そこにはそれを作成したスタッフの名前も掲載されている。一方、ライバルのGPTやClaudeはクローズドであり、その技術の中身に関する情報も限られている。

もしDeepSeek-V3が中国の悪い面について口ごもることが気に入らないのであれば、ダウンロードして中国の暗部について再教育すればよく、自分の入力内容が中国政府に筒抜けになることが心配なのであれば、自国のサーバーにインストールして使えばよいのである。

さっそくメタでは4つの作戦室を設けてDeepSeekをダウンロードして解析し、自社のモデルを改善するためのリバース・エンジニアリングに取り組んでいるそうである(劉・屈、2025)。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事、積極的な利下げ支持 他の当局者と

ビジネス

米ISM非製造業指数、9月は50に低下 新規受注が

ビジネス

BofA、米利下げ時期予測を10月に前倒し 年内1

ワールド

トランプ氏、ハマスにガザ和平案合意を要求 米東部時
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story