コラム

ガソリン車など「完全禁止」に突き進む英国...メーカーからは「持続不可能」「存続の危機」の声

2024年10月16日(水)12時31分
EV推進のイギリスがガソリン車などを完全禁止へ

William Barton/Shutterstock

<ハイブリッド車も「ゼロ・エミッション」の定義を満たさず、新車販売は完全禁止の予定。メーカーは財政的インセンティブの導入を要請>

[ロンドン発]今年始まった英国のゼロ・エミッション車(ZEV)規制は、自動車メーカー(年2500台以上生産)が販売する乗用車(新車)の少なくとも22%は完全電気自動車(EV)や水素燃料電池自動車でなければならないと義務付けている。バン(商用車)の場合は10%だ。

これらの規制は段階的に引き上げられ、2030年には乗用車80%、バン70%、35年にガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の新車販売は完全に禁止される。メーカーは規制を超えて販売されたZEV以外の乗用車1台につき最大1万5000ポンド(約291万円)の罰金を科せられる。

プラグインハイブリッド車(PHEV)を含むハイブリッド車は短距離なら電気で走るとはいえ、二酸化炭素を排出する内燃エンジンを使用している。排出量が少ないとはいえ、ハイブリッド車は「ゼロ・エミッション」の定義を満たすとはみなされていない。

EVへのシフトに重大な懸念

バンについての罰金は当初9000ポンド(約175万円)だが、来年以降1万8000ポンド(約350万円)に引き上げられる。ただし、メーカーは将来のZEVクレジットを前借りしたり、ZEV目標を上回る分を他のメーカーから購入したりすることもできる。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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