コラム

「悪魔の化身」ボルトン米大統領補佐官の解任は日本にとってプラス、マイナス?

2019年09月12日(木)13時30分

ボルトンはときに強硬過ぎた反面、同盟の価値は理解していた Joshua Roberts-REUTERS

[ロンドン発]ドナルド・トランプ米大統領は10日、「狂犬」の異名を取ったジェームズ・マティス前国防長官に「悪魔の化身」と呼ばれた超タカ派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任したとツイッターで発表した。

「ボルトン氏に昨夜、もうホワイトハウスで働く必要はないと伝えた。私も、他の政権メンバーも彼の助言の多くに強く反対した」「それでジョンに辞めてくれないかと頼み、今朝、受け入れられた。ジョンには非常に感謝している。来週に新しい補佐官を指名する」

ボルトン氏はツイッターで「昨夜、辞任を申し出たところ、トランプ大統領は『明日、話そう』と言った」と解任を否定。ボルトン氏は北朝鮮やイラン、ベネズエラ問題で強硬路線を主張し、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンとの対話を巡ってもトランプ氏と対立していた。

<参考記事>ボルトン解任はトランプにしては賢明だった

マイク・ポンペオ国務長官はトランプ氏がツイッターで解任を明らかにしたわずか2時間後の記者会見で「世界の指導者は米政権から1人が去っただけでトランプ大統領の外交政策に重大な変更があると考えるべきではない」と述べ、ボルトン氏と意見対立があったことを認めた。

朝鮮半島の専門家に聞く

ボルトン氏はブッシュ(子)政権で国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)や国連大使を歴任、イラク戦争を強行したネオコンの1人。イラン核合意からの離脱やロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約破棄を主導し、米朝首脳会談では北朝鮮への強硬姿勢を貫いた。

ボルトン氏の解任は日本にとってプラスなのか、マイナスなのか、有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)アメリカのマーク・フィッツパトリック前本部長(現研究員)に尋ねた。フィッツパトリック氏は日本や朝鮮半島情勢に詳しい核問題の世界的第一人者だ。

20180419_103010.jpg

フィッツパトリック氏は核問題の第一人者でもある 筆者撮影

――ボルトン氏の解任は米国にとって全体的に良いことですか

「全体的には良いことです。ワシントンは全体として、右派のごくわずかな例外を除いて、ボルトン氏の解任に安堵しています。彼はイラク戦争の悲惨な侵略から何も学ばなかった攻撃的な介入主義者です。すべての軍縮管理と、敵対国との話し合いに反対しました」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナGDP、1─4月は前年比4.4%増 景気

ビジネス

シンガポールGDP、第1四半期は前年比2.7%増 

ワールド

中国軍、台湾周辺で軍事演習開始 新総統の就任受け

ワールド

AIモデルの輸出規制容易にする法案、米下院委が可決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結果を発表

  • 2

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき

  • 3

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の大群、キャンパーが撮影した「トラウマ映像」にネット戦慄

  • 4

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 5

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    魔法の薬の「実験体」にされた子供たち...今も解決し…

  • 9

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story