コラム

大企業が次々と人員削減に動き出した理由...従来と違う「黒字リストラ」も、実は不思議ではない

2025年06月13日(金)18時42分

ビジネスそのものに起因する収益率の違い

ソニーとパナソニックの両社を比較すると、製造原価にはそれほど大きな差は生じていないにもかかわらず、パナソニックは営業利益率においてソニーに大きく水をあけられている。大規模な人員削減で販管費を削減して利益率を向上させたい意向だが、短期的な方策としては一定の効果が見込めるものの、中長期的に大きな効果を得られるのかは何とも言えない。

パナソニックの人件費率が高いのは、過剰な社員を抱えていることだけが原因ではない。同社のビジネスは従来型製造業のスタイルから完全に脱却できておらず、人材の活用効率が下がっている可能性がある。

一方、ソニーは高収益な金融事業をグループ内に抱えていることに加え、コンテンツの販売が伸びており、少ない人数でより多くの収益を稼げる体質が出来上がっている。


従来型製造業を中心としたパナソニックの事業構造では、どうしても人件費が過大になってしまう。つまり同社の収益率の低さはビジネスそのものに起因する部分が大きく、人員削減は対症療法にすぎないとみることも可能だ。

両社の株価に違いが生じているのは、投資家がこうした現実を厳しく受け止めているからにほかならない。長期的な業績拡大と株価上昇を実現するには、単純な人員削減ではなく、抜本的な事業構造の転換に踏み込む必要がある。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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