コラム

バイデンの米大統領選「勝利」は、日本経済にプラスかマイナスか

2020年11月11日(水)12時01分

一方、バイデン氏は自由貿易体制への復帰や雇用回復を公約に掲げている。7000億ドルを投じて製造業を支援するとともに、4年間で1000万人規模の雇用を創出するとしている。再生可能エネルギー分野に4年間で2兆ドルの投資を行うほか、国民皆保険制度であるオバマケアを拡充し、低所得者や高齢者向けの公的支援も拡大する方針だ。

一連の施策には巨額の財源が必要となり、場合によっては増税が行われるので、短期的には株価にマイナスだが、長期的には中間層の消費が回復し、持続的な成長が期待できる。従来と同様、製造業の輸出を軸に日本経済を回していくのであれば、自由貿易体制の維持を掲げるバイデン氏のほうがメリットが大きい。

この原稿を書いている11月4日時点では最終的な結果は判明していないが、トランプ氏が再選された場合、世界経済のブロック化が相当なレベルまで進むと考えられる。バイデン氏が勝利すれば製造業は一息つけるだろうが、他国の選挙に自国産業が振り回されるのは望ましいことではない。

どちらが勝つにせよ、輸出依存の体制を見直すタイミングが到来しているのは間違いなく、アメリカがさらに孤立主義に傾いても大丈夫なよう、日本は内需主導型経済への転換を急ぐべきだろう。

<本誌2020年11月17日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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