コラム

ローソン不振の原因は経営者か親会社か

2017年05月09日(火)11時40分

最終的な評価は数年後にはっきりする

ローソンと三菱商事の関係について「商社のリソースをフル活用し、シナジー効果を見込む」といった切り口の報道をよく見かけるが、現実はそう単純な話ではない。昨年、セブン&アイ・ホールディングスのトップを退任した鈴木敏文氏は、商社のコンビニ進出に関し「商社が小売店をやってもうまくいくわけがない」と何度も批判してきたが、その理由は、両者が本質的に利益相反の関係になっているからである。

ちなみに玉塚氏の前任者である新浪氏の時代も、ローソン各店の平均売上高はほとんど変わっていない。同じ期間で売上高を5%拡大できているセブンとの差は歴然としている。つまりローソンはここ10年、ほとんど成長できていなかったといっても過言ではない。

玉塚氏は基本的に新浪路線を継承しているが、新浪氏も実はローソンを成長させることができなかった。だが、その理由が経営者の力量ではなく、ローソンの商品力不足にあるとしたら、新浪氏とその後継者である玉塚氏の評価も変わってくる。三菱商事の傘下にあるという制約上、ローソンは他の商社グループからの購入に対して制限が発生する可能性がある。それが商品力を低下させ、ひいては店舗の売上高に影響している可能性は否定できない。

新浪氏は三菱商事出身だが、本人はプロ経営者を目指し、片道切符でローソンに乗り込んだとも言われる。新浪氏と玉塚氏が、三菱商事に対する一種の防波堤として機能していたのなら、そして玉塚氏退任の理由が、(株主としてではなく)仕入れ先としての三菱商事の意向を十分に反映していないということであるならば、売上高の数字をそのまま成績表にするわけにはいかなくなる。

この答えは、おそらく後継トップである竹増氏がどのような業績を残すのかで明らかとなるだろう。根っからの三菱マンに見える竹増氏が、ローソンの売上高、加盟店の売上高、三菱商事の関連部門の売上高の3つについてトリプルで増収を実現した場合、玉塚氏は凡庸な経営者だったという評価になる。一方、竹増体制において、加盟店やローソン本体の業績が犠牲になるようなら、玉塚氏の評価はむしろ上がっていくかもしれない。

【参考記事】日本でコストコが成功し、カルフールが失敗した理由

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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