コラム

トランプ肝いりの「ステーブルコイン」でドル急落?

2025年07月01日(火)15時00分

怪しい金融商品と言えば、1720年のイギリス「南海泡沫事件」を思い起こす。相次ぐ戦争でたまった国債をさばくべく、トーリー党のロバート・ハーレーが「南海社」を設立。これは奴隷貿易の独占権を資産として株を発行し、金持ちに手持ちの国債と交換で南海社の株を引き渡した。これで大枚の国債を償還できたのはいいが、南海社の株は暴落。これには国王一家まで投資していたから大騒ぎになった。

今のアメリカの状況はこれに酷似している。冒頭のワン・ビッグ・ビューティフル法案とGENIUS法案が議会を通る7月頃には、ドルが急落するかもしれない。トランプは自由と民主主義、市場経済という近代の価値観にあまり構わないが、中央銀行と管理通貨という近代国家の金融メカニズムも破壊するつもりだろうか。


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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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