コラム

米国債デフォルトに怯えるトランプ......日本は交渉カードに使えばいい

2025年05月13日(火)15時30分

トランプも米国債デフォルトの不安を感じている RICHCANO/GETTY IMAGES

<GDP約1年分の累積国債を抱えるアメリカにはデフォルト危機の不安があるが、一方で日本国債もGDP2年分まで積みあがっている>

トランプ米政権は発足以来、関税引き上げやらウクライナの停戦やらで、世界の耳目を引き付けっ放し。しかし、政権中枢がもっと気にしているのは、米国債の発行しすぎで買い手がいなくなり財政が行き詰まる、つまりデフォルト(債務不履行)の危機ではないだろうか。トランプ自身、就任早々、こうした不安を漏らしたと報道されている。日本では折しも、加藤財務相が米国債売却の可能性を口にした、しないが話題になったが、それは売却が「デフォルト」の導火線に火を付ける可能性があるからだ。

デフォルトの危機とは、どういうことか? 現在、未償還の米国債は約28兆ドル累積しているが(米GDPは約29兆ドル)、利払いだけでも年間約1兆ドルあり、最大の支出項目になっている。昨年度の国債発行額は22兆ドルに及んでいるが、その多くは利払いと、満期が来た国債の借り換えに充当され、歳入に回るのは2兆6000億ドル程度。多額の国債発行は資本市場を圧迫して長期金利の上昇を誘い、それがまた利払い額を増加させる。悪循環だ。


こんなことでは、さしもの米国債もそのうち買い手がいなくなる。だからといって、FRBが紙幣を発行して国債を大量に買い上げると、カネが市場にあふれてハイパーインフレになり、ドルは暴落するだろう。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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