コラム

「ぼったくりイギリス」から逃げられないカラクリ

2016年12月22日(木)15時53分

Neil Hall-REUTERS

<「ぼったくりイギリス」にも逃げ道はある。電気・ガスは毎年契約を切り替え、電車賃は事前にネット予約し、銀行口座は分散させて毎月貯金を移動させる......。もちろんたいていの人はそんな面倒なことはできないが>(写真:電車賃は当日券を買うのが最も高くつく)

 前回の僕の「ぼったくりイギリス」の愚痴につきあってくれた人は、どうして僕が冒頭で、イギリスは概して安く生活できる国だと言っていたのか不思議に思ったかもしれない。実は、イギリスのぼったくりには逃げ道があることが多いのだ。

 たとえば、電気、ガス会社は新規契約の割引キャンペーンとして、初年度の年間料金を安めに設定している。毎年、契約終了の時期に忘れずに他社に乗り換えれば、かなりお得にできる。でもそれを忘れると、次年度からばかばかしいほど高い「標準料金」が適用される。だから僕は毎年、電気、ガス会社の契約切り替えを忘れないようにしている。

 同じことがインターネットのプロバイダーにもいえる。ただし、利点は割引料金ではなく、乗り換え特典だ。特典の内容はしょっちゅう変わる。時には100ポンドの金券、時には50ポンドの現金、時にはなにもなし。だから乗り換えのタイミングが重要だ。

 最近、僕は80ポンドのキャッシュバック期間にプロバイダーを切り替えたが、「2カ月以内」のキャッシュバックがなかなか送られてこないのでやきもきした。実際には、数週間後に小切手が到着したのだけれど。

【参考記事】トランプ勝利で実感するイギリス君主制の良さ

 ところが先週、年間前払いで契約したはずなのに口座から月払い料金が引き落とされていたことがわかった(つまり、この手のことには目を光らせておかないといけないということだ。こうした「事務上の手違い」はよくある)。
 

安いプランは企業側の「保身」策

 次は、電車運賃について。当日いきなり駅に行って乗車券を買うと(世界の多くではそれが普通のやり方だと思うけれど)、最も高くつく羽目になる。もっと安い切符を手に入れるには、混雑時間帯以外の特定の電車をインターネットで予約する必要がある。こうした切符は3~4日前に売り切れることもあるが、前日でも手に入ることが多い(ただし、当日は無理)。

 この切符は前後の電車に予約変更もできないし、払い戻しもできない。かなり前から計画を立てた休暇の旅行なら悪くないシステムだが、僕のように、月に何度か急用でロンドンに行くような場合には、とても具合が悪い。

 最後に、銀行について。各銀行は金利の高い貯蓄口座をいくつか用意しているものの、これには制約がある。たとえば、毎月500ポンドを入金するなら、総額2000ポンドまでは金利が4%になる口座(2000ポンドを超えると金利はゼロになる)。あるいは毎月1000ポンドを預け、さらに2件の自動引き落としを設定すれば、5000ポンドまでは3%の金利がつく口座、といった具合だ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、売れ残り住宅の買い入れ検討=ブルームバーグ

ワールド

豪が高度人材誘致狙い新ビザ導入へ、投資家移民プログ

ビジネス

米シェブロン、4月に最も空売りされた米大型株に テ

ワールド

米ユーチューブ、香港で民主派楽曲へのアクセス遮断 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story