コラム

栄華を誇った英スーパーの衰退

2016年01月28日(木)16時20分

業績拡大を続けてきたイギリスのスーパーは今、困難な時代を迎えている(写真はロンドンにあるセインズベリーズの店舗) Suzanne Plunkett-REUTERS

 わが家を購入したとき得したことの1つが、大手スーパーのセインズベリーズまで歩いてたったの2分という立地の良さだった。牛乳やパンが手頃な値段で買える。僕は普段、午後6時前後に店に行って、何かしら値引き食品を買うことが多い。その日の夕食のおかずにすることもあるし、冷蔵庫にセール品のピザやレトルトカレー、レンジでチンするだけのパスタなんかをストックしておくこともある。

 なんだかんだで僕は、ずっとセインズベリーズをひいきにしていた。ほかの大手スーパーでいえば、ウェイトローズはやや高級路線で、値段が若干高め。テスコは少し手ごろな価格で品ぞろえ豊富だから客も多い。おまけにテスコはそこら中にあり、郊外の広大な店舗から地元の小型店まであらゆる町に展開している。

 アズダは価格が安めだが、低所得地域への出店が多いせいか、僕はあまり見かけたことがない。モリソンズは北部を中心に出店している。アイスランドという激安スーパーにはめったに行かない。(ケチャップやティーバッグや冷凍食品といった)必需品の備蓄には便利だが、生鮮食品の品ぞろえがひどいからだ。

苦戦するスーパー「ビッグ4」

 今日、近所のセインズベリーズに行くと、何だかとんでもなく違和感を覚えた。しばらくしてから僕は、そのわけに気付いた。僕以外の客がほとんどいなかったのだ。不気味なほどに。
 
 数年前には、この店は大混雑でほかの客と押し合いへしあいが普通だった。体がぶつかっては謝り合い、レジ待ちの列でちょっといら立ち、特売品をめぐって「争奪戦」が繰り広げられたものだ。

 もちろん、今だって土曜日になればそんな光景が見られるだろう。ほかのどこかの支店は、普段も客でごった返しているのかもしれない。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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