コラム

コロナ禍で医療体制に莫大な予算が投じられる一方、「別の命」は失われ続けた

2023年02月25日(土)18時01分
コロナ、新型コロナ、ダイヤモンド・プリンセス

「3周年」でダイヤモンド・プリンセス号は注目を集めたが(2020年2月) KIM KYUNG HOON-REUTERS

<コロナ関連のニュースは派手に報じられたが、その陰で若い女性など弱い立場の人々が大勢亡くなっていることは見過ごされている>

新型コロナをめぐるニュースには、その扱いに明らかな格差がある。日本で2020年2月に集団感染が確認された大型客船ダイヤモンド・プリンセス号をめぐるニュースは、今年で3年という節目もあり新聞やテレビで大きく報じられた。

さらに今春には新型コロナの感染症法の分類は2類相当から、季節性インフルエンザと同じ5類へと変わることが既定路線となった(編集部注:1月27日、政府は5月8日から5類へ移行する方針を正式決定)。5類移行をめぐって、SNSやインターネットで盛んに医師らが意見を発信したことも再び注目された。どうすれば現場が、インフルエンザと同様の医療体制を構築できるかを実務的に考えるフェーズに移っていると言える。

だが医療関係者で目立ったのは「どうせ、感染状況は悪化する」と言わんばかりのネガティブな反応だった。考えは人それぞれだが、重要なのは現行の体制下では医療現場に巨額の補助金が投じられ続けているという事実だ。これは医療関係者の声がメディアにも、政治にも届いてきたことの証左である。

その裏で昨年、さしたる注目も集めないままひっそりと流れていったニュースがあった。政府が取りまとめた「自殺対策白書」で明らかになったのは、働く女性の自殺がコロナ禍以前の5年間の平均に比べて約3割増えたことだ。

「職を持つ女性の自殺者は、コロナ禍前の過去5年平均(1320人)比で28%増えていたことが判明した。年代別では20歳代が64%増、50歳代で28%増えていた」(読売新聞オンライン版、昨年10月14日付)という。

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

5類引き下げ前におさらいする、新型コロナのこれまでとこれから

2023年5月2日(火)15時10分
東京

マスクを着用しない人の姿も珍しくなくなった(写真は3月20日、東京) Androniki Christodoulou-REUTERS

<5月8日から感染法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられる新型コロナウイルス。流行が始まって3年が経過した今、3つのトピックス──最新の感染状況、ウイルスの起源、ワクチン接種と副反応──でこれまでとこれからについて解説する>

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「医学的な根拠はない」のに、マスクを外せない...「キリシタンの踏絵」と化したコロナ対策の末路

2023年4月28日(金)07時56分
マスク

2023年3月、マスク着用については個人の判断に委ねる方針を決定(東京都内)Kim Kyung Hoon-REUTERS

<5月8日、感染症法における位置づけが「5類」になる新型コロナウイルス。私たちはこの日を境にマスクを外すのか。それとも「マスク信仰」を棄教することができないのか>

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新型コロナウイルス

「ウイルスは研究所で生まれた」──いまだ「機能獲得実験の証拠」がタブーな理由とは?

A China Lab Leak?

2023年4月21日(金)13時24分
スティーブン・クエイ(医師・科学者)
武漢ウィルス研究所

新型コロナは研究所由来だとの主張を黙殺したメディアも多かった(武漢ウィルス研究所)Thomas Peter-REUTERS

<学術界は「情報の門番」として、研究所由来のウイルスであるという情報を阻止してきた。しかし「事実」に目をつぶれば、さらに恐ろしいウイルスが登場する>

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パンデミック

新型コロナ、胎盤経由の感染で赤ちゃんに脳障害の症例初確認

2023年4月7日(金)14時31分
新型コロナウイルスのCGグラフィック

米マイアミ大学の研究者らは6日、新型コロナウイルスが母親の胎盤を通じて胎児にうつる母子感染によって脳障害を起こしたと考えられる最初の2症例を確認したと明らかにした。写真は2020年1月撮影(2023年  MAM/CDC/Handout via REUTERS)

米マイアミ大学の研究者らは6日、新型コロナウイルスが母親の胎盤を通じて胎児にうつる母子感染によって脳障害を起こしたと考えられる最初の2症例を確認したと明らかにした。

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医療

モデルナ、コロナワクチン4倍に値上げ 「政府調達の規模の経済失う」バンセルCEO

2023年3月23日(木)12時36分
モデルナのステファン・バンセルCEO

モデルナのワクチン。コネチカット州 で2月撮影(2021年 ロイター/Mike Segar)

米バイオ医薬品大手モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は22日、同社の製新型コロナウイルスワクチンが政府契約から商業販売に移行する際に販売価格を1回当たり130ドルと現在の4倍に引き上げることについて、政府調達による「規模の経済」が働かなくなるためだと釈明した。米上院の厚生教育労働年金委員会の公聴会で証言した。

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