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マクロスコープ:流動する政界、高市氏と玉木氏の「極めて重要な1週間」

2025年10月14日(火)10時00分

公明党が自民党との連立政権から離脱を表明し、政界の流動性が高まっている。自民の高市早苗総裁は首相就任に備え人事を進める一方、動向が注目される国民民主党の玉木雄一郎代表(写真)は10月14日以降、主要政党との幹事長会談を実施し、その後党首会談を目指す考えを明らかにした。7月2日、都内で代表撮影(2025年 ロイター)

Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 14日 ロイター] - 公明党が自民党との連立政権から離脱を表明し、政界の流動性が高まっている。自民の高市早苗総裁は首相就任に備え人事を進める一方、動向が注目される国民民主党の玉木雄一郎代表は14日以降、主要政党との幹事長会談を実施し、その後党首会談を目指す考えを明らかにした。今週の注目点をまとめる。

<立民と国民民主の連携は困難か>

「今週は極めて重要な1週間だ。まずは幹事長間で協議し、政策が一致した政党と協力していく」。玉木氏は13日夜、自身のSNSでこう語った。自民、公明に加え、立憲民主党や日本維新の会とも連携の可否について協議する考えを示したものだ。幹事長協議で政策の相違について論点を整理し、歩み寄りが可能かを判断した上で党首会談につなげる狙いだ。

現在、自民党は衆院会派で196議席しか持たず、過半数の233に遠く及ばない。比較第1党とはいえ、このまま首相指名に臨めば高市氏の選出がままならない情勢だ。

そこでポイントとなるのは、国民民主と各党との距離感だ。万が一、立民(衆院会派議席148)、維新(同35)、公明(同24)と国民民主(同27)がまとまれば、議席数は計234(立民の副議長除く)となり、数字の上では過半数に達するからだ。

とはいえ、国民民主と立民の連携は現実的ではないとの見方が大勢だ。玉木氏が協力の条件とする安全保障政策と原発を含むエネルギー政策の一致を実現する場合、立民が党内手続きを経て綱領を変更する必要も出てくる。

野田佳彦代表が週末のテレビ番組で「のりしろを持って協議に応じてほしい」と秋波を送ったのに対し、玉木氏はSNSで即座に「安保政策は1ミリの揺らぎがあってもいけない。譲る譲らないの話ではない」と反発。国民民主幹部は「例え立民と協力体制を築いてもすぐに瓦解するのは目に見えている」との姿勢を崩していない。

<政策ごとの連携がメインシナリオに>

立民と国民民主の連携が不発となれば、短期的には「スーパー少数与党」となった自民と、国民民主や維新、公明などによる政策ごとの連携がメインシナリオになりそうだ。実際、公明関係者は「来年度予算編成までは我々にも関わってきた責任がある」と述べており、自民との協力に前向きな姿勢を示している。

玉木氏は13日、高市氏が診療報酬や介護報酬の積み増しを表明していた点を念頭に「全国の病院経営が厳しい。(高市氏が)そういう政策をするなら協力したい」と語った。高市氏の首相就任を想定した発言とみられる。自身が「(首相)ポストにはこだわらない」とも強調した。

高市氏が首相就任を果たし国民民主が自民に影響力を保持する状況が続けば、「責任ある積極財政」を掲げる高市氏の基本路線は維持されるとみられる。

<「玉木首相でも」の声 高市氏は難しい判断に>

一方、中期的な動きはさらに混迷を深める。自民内には政策ごとの連携を短期間にとどめたいとの思惑がある。昨年10月に発足した石破茂政権が政治とカネの問題に端を発して大型選挙で敗北を重ね、予算や法案成立のために野党への譲歩を重ねた結果、独自色を失うジレンマに陥った記憶があるからだ。「玉木首相でもいいから維新も巻き込んで安定政権を目指すべきだ」(参院議員)との声も少なくない。

玉木氏自身は「政策が実現したら信頼関係が醸成され、その先の連携のあり方も広がっていく」と述べる。「政策」とはガソリン暫定税率廃止と所得税非課税枠拡大を指す。まずは高市氏が実現に動くかを見定める構えだ。

自民幹部によると、高市氏はすでに自身の首相就任を見越して官房副長官ら側近の人事を進めている。ただ、首相となり野党との政策ごとの連携が進んだとしても、石破政権の二の舞と見れば党内に安定政権を求める声が高まるのは必至。首相指名に向けた対野党戦略とその後の政権運営は、いずれも高市氏にとって難しい判断の連続となりそうだ。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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