ニュース速報
ワールド

アングル:超長期金利、30年債入札無難で上昇一服 財務相人事にくすぶる警戒

2025年10月07日(火)19時09分

 7日の円債市場では、懸念されていた30年国債の入札を無難に通過したことで超長期金利の上昇が一服した。写真は紙幣。2013年2月、都内で撮影(2025年 ロイター/Shohei Miyano)

Tomo Uetake

[東京 7日 ロイター] - 7日の円債市場では、懸念されていた30年国債の入札を無難に通過したことで超長期金利の上昇が一服した。ただ、自民党の高市早苗新総裁が掲げる「責任ある積極財政」を巡って投資家が抱く財政懸念は払しょくされておらず、市場は目先、鍵となる「財務相人事」の行方を固唾をのんで見守っている。

前週末の自民党総裁選で高市氏がサプライズ勝利を収めたことを受け、週明け6日の円債市場では「高市トレード」が加速、日銀の利上げ時期が後ずれするとの見方から短期債が買われ、財政悪化懸念から超長期債が売られた。政治・財政政策が不透明な中で投資家が応札を手控えやすいとの見方から、7日の30年国債入札への警戒感も強く、入札直前の同日午前には30年金利が過去最高水準となる3.345%に急上昇した。

ところが、入札は予想外に無難な結果となった。新回号となったことや利回り水準の高さに着目した一定の需要がみられた。SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、高市新総裁による党役員人事で麻生太郎最高顧問をはじめ財政規律を重んじる麻生派の起用が伝えられたことが一定の安心感となり、投資家の入札参加の妨げにならなかったと推察する。

<本丸は「財務相人事」>

ただ、これまでに明らかになった人事だけで、債券市場が抱く財政拡張懸念が払しょくされたわけではない。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは「今後の連立協議の行方や補正予算、来年度予算、税制改正などで政府の財政スタンスを見極めたい市場参加者も多いだろう。超長期債は投資目線が定まりにくく、ボラティリティの高い状況が続きそうだ」との見方を示す。

債券市場では、高市氏の党役員・閣僚人事のうち、本丸といえる財務相のポストについてまだ名前が出てきていないのが気がかり、との声が聞かれる。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、高市新総裁が国民民主党の玉木雄一郎代表と密かに会談し、麻生氏も同党の榛葉加津也幹事長と会談したと伝わったことを手掛かりに「新自民党執行部は玉木代表に財務大臣のポストをオファーすることで、連立入りを打診している可能性がある」との見方を示す。

現時点では国民民主党の連立入りは必ずしも可能性が高いわけではないが「財務大臣のポストを得るのが誰になるのかは当面の金融市場における大きな焦点」だと指摘する。

SMBC日興の田氏は「万が一、積極財政派である玉木氏が財務相に起用される事態となれば、いったん落ち着きを取り戻した超長期債の売りが再燃する可能性が高い」と話している。

円債市場で存在感を示す海外勢の一角、英RBCブルーベイ・アセットマネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)もまた警鐘を鳴らす。

ダウディング氏は「高市氏は日本のマーガレット・サッチャー(1979年に英国初の女性首相に就任)を目指す考えのようだが、もし市場の懸念を無視するような選択をすれば(2022年のトラス・ショックの原因となった英元首相の)リズ・トラスのような危機的状況に陥るリスクがある」とみている。

(植竹知子 編集:平田紀之、石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米政権、1.6兆ドルの学生ローン債権の一部売却検討

ワールド

ノーベル物理学賞、米国拠点の3氏に 次世代量子技術

ワールド

米ホワイトハウス、政府閉鎖中の職員給与保証せず=ア

ワールド

アングル:超長期金利、30年債入札無難で上昇一服 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレクションを受け取った男性、大困惑も「驚きの価値」が?
  • 3
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿すると「腎臓の検査を」のコメントが、一体なぜ?
  • 4
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 5
    一番お金のかかる「趣味」とは? この習慣を持ったら…
  • 6
    筋肉が育つだけでは動けない...「爆発力」を支える「…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃の「オーラの違い」が話題…
  • 8
    監視カメラが捉えた隣人の「あり得ない行動」...子供…
  • 9
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 10
    「不気味すぎる」「昨日までなかった...」ホテルの天…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 7
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 8
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 9
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 10
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中