ニュース速報
ワールド

アングル:トランプ政策で留学生減、財政難の米大学に信用リスク

2025年10月05日(日)08時06分

 シカゴにあるカトリック系私立大学のデポール大はこの秋、外国人学生の入学者数が30%減少したため、直ちに支出削減を実施すると教員に伝えた。写真は同大のキャンパス。10月2日、シカゴで撮影(2025年 ロイター/Jim Vondruska)

Kaylee Kang Jaimi Dowdell Helen Coster

[2日 ロイター] - シカゴにあるカトリック系私立大学のデポール大はこの秋、外国人学生の入学者数が30%減少したため、直ちに支出削減を実施すると教員に伝えた。この動きはトランプ米大統領の破壊的な教育・移民政策に対処する米大学の最新の事例だ。

ロバート・マニュエル学長は9月30日の教員向けメモで、支出の削減額は未定だが、対策は雇用凍結、経営幹部の報酬削減、裁量的支出の制限などを含む可能性があると述べた。留学生の入学者数は前年比755人減少し、特に大学院の新入生は62%近くも急激に減少したという。昨年度の学生総数は約2万1000人で、そのうち2500人ほどが留学生だった。

マニュエル氏は減少の理由について、米政府の方針転換に伴って、学生の査証(ビザ)取得が難しくなり米国留学に対する関心が低下したためだとした。

デポール大は、高等教育を揺るがすトランプ政権の政策に対応して予算削減を発表した数十校の一つだ。数十億ドル規模の予算がつく各種の学術研究プログラムは、海外から学生を引きつける大きな要因となっているため、予算削減は脅威となる。ロイターが収集した現時点のデータでは大学院に新たに入る多くの留学生が他国を選んでいる。

学生ビザも政権の標的になってきた。一部のビザは取り消され新たに申請する学生は発給の遅延に直面している。米国務省は申請者がソーシャルメディアのアカウントを公開するよう求め、ビザ審査官が米国に対して敵対的な態度を取る学生を排除できるようにした。

トランプ政権は5月、ハーバード大がキャンパスで反ユダヤ主義や民族差別を解決できていないとして留学生の受け入れを禁じた。連邦地裁は一時的にこの措置を差し止めたが、政府は控訴している。

米国務省と国土安全保障省はロイターのコメント要請に対し、声明で政府は留学生の行動を監督する権利を持っていると述べた。

デポール大に加えて、少なくとも35校がトランプ政権の政策に応じて予算削減を発表した。ジョンズ・ホプキンス大は研究助成金が8億ドル(約1176億円)削減されたため、3月に2000人以上を解雇した。ノースウェスタン大は425人分の職を削減し、南カリフォルニア大は630人以上を解雇した。いずれも連邦政府からの助成金の減少、留学生の入学者数の減少、その他の財政圧力を理由に挙げた。

<信用リスク>

非営利団体NAFSA(全米国際教育者協会)の推計によると、2024年度に米国内で学んだ留学生は約120万人。7月時点の予測では、25年度は最大15%減少し、米経済に対する打撃が約70億ドルに達すると見込んでいる。

国土安全保障省の留学生・交流訪問者プログラム(SEVP)によると、米国内で学んでいる留学生数は10月時点で94万2131人と、前年の96万5437人から2.4%減少した。しかし、学生の出入りがあり一部の大学がまだ報告をしていないために、これらの数字は全体像を示していない。

多くの留学生は奨学金支給の対象外で授業料を全額支払っている。国内学生の減少や運営費の増大、政府補助金削減を補おうとしている多くの大学にとって、重要な収入源となっている。

トランプ政権は1日、大学に対して学部留学生の割合の上限を15%に設定する協定に署名するよう求めた。ホワイトハウス高官の大学向けのメモでは「外国人学生に依存する大学は有能な米国人学生の就学枠を減らすリスクがある」とされていた。

格付け会社ムーディーズは6月、留学生の入学者数の減少が一部大学にとって信用リスクになり得ると警告した。特に大学院課程で留学生に対する依存度が高い学校は脆弱で、こうした依存度は過去10年間で高まっていると指摘。報告書では「大学院生がしばしば一定のプログラムに対して高い学費を支払っているため、こうした学生がいなければ収入に深刻な影響をもたらす」との懸念を示した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

政府機関閉鎖が最大の関心事、議会動向に注目=今週の

ワールド

アングル:トランプ政策で留学生減、財政難の米大学に

ワールド

アングル:米国抜きの貿易連携模索するEU、「トラン

ワールド

自民党の高市新総裁、金融政策の責任も「政府に」 日
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿すると「腎臓の検査を」のコメントが、一体なぜ?
  • 4
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 5
    イエスとはいったい何者だったのか?...人類史を二分…
  • 6
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 7
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 8
    「美しい」けど「気まずい」...ウィリアム皇太子夫妻…
  • 9
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 10
    一体なぜ? 大谷翔平は台湾ファンに「高校生」と呼ば…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 8
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中