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中国産レアアース磁石の流通再開、供給不足のリスクは解消されず

2025年06月30日(月)10時53分

中国政府による輸出規制で滞っていた同国産レアアース(希土類)磁石の流通が再開したため、自動車のサプライチェーン(供給網)全体が停止する脅威は弱まりつつある。写真は2010年10月、内モンゴル自治区で撮影(2025年 ロイター/David Gray)

[ベルリン/北京 27日 ロイター] - 中国政府による輸出規制で滞っていた同国産レアアース(希土類)磁石の流通が再開したため、自動車のサプライチェーン(供給網)全体が停止する脅威は弱まりつつある。だが自動車メーカーと部品業者の話では、生産計画は依然として不確実性に直面しており、供給不足のリスクが解消されたわけではない。

欧州自動車部品工業会(CLEPA)の市場部門責任者、ニルス・ポエル氏は、欧州の部品業者は今月に入って予想されていた幅広い混乱を回避するのに十分なライセンス(輸出許可)を受け取ったものの、何百件もの申請が今なお承認されていないと話した。

同氏は、ライセンスの発行件数が申請件数全体に占める比率は25%から60%に上昇したが、エンドユーザーが米国を拠点としている場合や、製品がインドなど第3国を経由する場合は、審査に長い時間を要したり、審査が優先されていなかったりすると指摘。「全体としては多分、7月も生産できるという感触であり、影響は対処可能であろう」と語った。

米自動車大手フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は27日、米コロラド州で発言し、同社は磁石不足のため複数の工場をここ3週間ほど閉鎖しなければならなかったと明らかにしたが、詳しくは説明しなかった。

一方、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)はロイター宛ての声明で、レアアース部品の供給は安定していると説明。欧州の同業ステランティスは、目先の生産を巡る懸念には対処済みだとした。

中国政府は今年4月、米国の関税への報復措置として7種類のレアアースと磁石の輸出を規制した。

輸出規制が課されて以降、中国からのレアアース磁石の輸出は約75%減少。アジア、欧州、米国では一部の自動車メーカーが生産停止を余儀なくされた。

ホワイトハウスは6月26日、中国との間でレアアースの輸出承認を加速する取り決めに署名したと発表したが、詳しい情報は提供しなかった。

ベセント米財務長官は27日、FOXビジネス・ネットワークのインタビューで、26日に発表された取り決めに基づき、以前にレアアースを定期的に輸入していた全ての企業を対象に、中国から米国へのレアアース出荷が早まるだろうと述べた。

米大手自動車部品会社の幹部によると、2週間前には自動車業界は「完全なパニック」状態であったが、中国によるライセンスの承認手続きが加速したため、現時点では生産が急停止する脅威は和らいでいる。

ロイター
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