米FRB当局者、関税政策の経済・物価への影響を注視

5月14日、米連邦準備理事会(FRB)の当局者らは、トランプ大統領による広範な関税政策や貿易交渉が物価と経済に与える影響を見極めるため、状況を注視していく考えを示した。米首都ワシントンで2022年1月撮影(2025年 ロイター/File Photo)
[ワシントン 14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の当局者らは14日、トランプ大統領による広範な関税政策や貿易交渉が物価と経済に与える影響を見極めるため、状況を注視していく考えを示した。
シカゴ地区連銀のグールズビー総裁はNPRのラジオ番組で「われわれは依然として慎重に見守っている状態だ。多くのノイズがあり、その中から本筋を見極めようとしている」と語った。
13日に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年比の伸びが2.3%と予想を下回り、約4年ぶりの低水準となった。しかし、低下は主に食品価格の下落によるもので、コアインフレ率は2.8%と3月から横ばいだった。
グールズビー氏は「少なくとも順調であることを示唆する数字が出続けている」とした上で「短期的な変動が大きいため、企業や中央銀行に長期的な結論を期待するのは現実的ではないだろう。非常に難しい環境だ」と語った。
サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁はカリフォルニア銀行協会で、「われわれは、今何が起ころうとも対応できる良いポジションにいる」と強調し、「忍耐が今日のキーワードだ」と述べた。
デイリー氏は、ここ数週間米西部各州を視察した際、企業や家計から多くの懸念の声を耳にしたものの、支出や投資が実際に抑制された兆候は経済指標にはほとんど表れていないと指摘した。
「ラスベガスのあるネバダ州など観光業への依存度が高い州では、海外からの観光客の減少が懸念されて不安になる。また消費者の懐が少し厳しくなると、国内需要の持続性についても懸念が高まる」と語った。
一方、ユタやアラスカなどの州では、企業や銀行が引き続き期待を持てるような継続的な経済活動があるとの認識を示した。
「堅調な経済成長、力強い労働市場、インフレ率の低下が見られる」と指摘。「人々は経済がかなり順調だと感じている。問題は不確実性を解消し、この良好な状態を維持できるようにすることだ」と語った。
ジェファーソンFRB副議長もニューヨークでのイベントで講演し、労働市場は堅調との見解を示した。第1・四半期の国内総生産(GDP)が小幅なマイナス成長となったことについて、輸入関連の統計が景気減速の度合いを過大に示しており、実態をゆがめていると分析した。
ただ、企業や家計の景況感は悪化しており、「(実体経済を示す)ハードデータに経済活動が弱まる兆候がないか非常に注意深く監視している」とも述べた。
ジェファーソン氏は、インフレ率は上昇する可能性が高いとしつつも、その期間がどの程度続くかは不透明との認識を示した。
「これまでに発表された関税率の引き上げが継続されれば、ディスインフレの進展が妨げられ、少なくとも一時的にインフレ率が上昇する可能性が高い」と予想した。「関税がインフレ率に持続的な上昇圧力をもたらすかどうかは、貿易政策がどのように実行されるかや、消費者物価への価格転嫁の度合い、サプライチェーンの対応、そして経済全体の動向次第となるだろう」と述べた。