ニュース速報
ビジネス

アングル:中国EC大手シーイン、有名ブランド誘致で品揃え拡大図る

2024年05月02日(木)17時17分

 4月30日、シーインは安価なプライベートブランドの衣料品やアクセサリーで知られるが、他の分野にも進出しつつある。ロンドンで3月8日撮影(2024年 ロイター/Suzanne Plunkett)

Helen Reid

[ロンドン 30日 ロイター] - 中国発の電子商取引(EC)サイト、SHEIN(シーイン)がプラットフォームに米日用品大手コルゲート・パルモリーブや玩具大手ハズブロのような有名ブランドを誘致し、取り扱う家庭用品の品揃えを拡大しようとしている。

シーインは安価なプライベートブランドの衣料品やアクセサリーで知られるが、他の分野にも進出しつつある。昨年の米国、ブラジル、メキシコに続き、今年に入って英国、ドイツ、フランスなど欧州9カ国で各種ブランドや小売業者に同社プラットフォームへのアクセスを提供している。

こうした戦略は、信頼を構築して最大手アマゾンに対する競争力を高める取り組みの一環であり、今年に予定されている株式上場を前に事業の拡大と新たな販売手法の開発を可能にするものだ。

シーインは先月、コルゲート・パルモリーブ、ハズブロ、サントリー食品インターナショナル、スペインの化粧品ブランドのベラ・オーロラも参加したマドリードでのイベントで、「マーケットプレイス」サービスについて説明した。

シーインの欧州・中東・アフリカ担当ブランド・オペレーション・シニア・ディレクター、クリスティーナ・フォンタナ氏は4月17日にパリで開催されたイベントで「シーインといえば誰もがファッションを思い浮かべるだろうが、われわれはあらゆる(商品を販売するための)段階を手がけている」と述べた。取り扱う商品の幅を広げたのは顧客がシーインのサイトを開いて他のブランドを探していることが分かったことがきっかけで、「消費者が求めているなら、その商品を提供する」と胸を張った。

シーインは以前アリババで働いていたフォンタナ氏を含め、中国の巨大EC企業などからマーケットプレイスの専門家を何人か引き抜いた。

こうした人材獲得が事業の急速な拡大を後押しし、1月31日までの半年間に欧州連合(EU)加盟国の月間アクティブユーザー数は平均1億0800万人に達した。

しかしシーインの成長は、違法または有害な商品への対策を求めるEUの新しい規制という波紋ももたらした。

シーインのマーケットプレイスが成功を収め、アマゾンやアリエクスプレスと競合できるかどうかはどのようなブランドを誘致できるかにかかっている、と専門家は指摘する。

シンガポールのフォーレスタ―のアナリスト、シャオフェン・ワン氏は「シーインが信頼できる、評判の良いマーケットプレイスのプラットフォームとして競争したいのなら、欧米の有名ブランドからの支持が絶対に欠かせない」とくぎを刺した。

<熱心な売り込み>

4月25日に米国で開かれた、潜在的な出店業者を対象としたオンラインセミナーで、シーインの出店業者マーケティング責任者のクレア・リン氏は、何百万人もの買い物客にアクセスし、売上を 「急増」させる機会だと熱心な売り込みを展開。「当社のショッピング体験は(顧客がくっついて離れなくなる)粘着性が極めて強く、ゲーム的な要素が非常に多く盛り込まれている。当社のサイトでの買い物は楽しいため、最短の買い物時間は約8分と業界平均を大きく上回っている」と説明した。顧客は「Z世代」と「ミレニアル世代」で、女性と男性の比率は約80対20で女性が圧倒的に多いという。

リン氏によると、現在、家庭用品などの「ホーム」、「エレクトロニクス」、「ビューティー&ヘルス」が最も好調なカテゴリーで、扱っていない唯一のカテゴリーは食品・飲料。

オンラインセミナーで上映されたスライドによると、「ホーム」カテゴリーは販売された商品の総額が2023年に3倍に増加。エレクトロニクスとビューティー&ヘルスもそれぞれ2.5倍、2.1倍に増えた。

ブランド各社はマーケットプレイスを通じた直接販売によって売上高を大きく伸ばすことができる。ただ、こうした販売方式に踏み切る前に、そのマーケットプレイスが商品を売りたい顧客層に適していることや、価格設定とプロモーションをコントロールできることを保証するようECサイト側に求めるのが普通だ。

シーインのプラットフォームは多くのサードパーティー小売業者を引き寄せている。

コーダリー、セラヴィ、ラ・ロッシュ・ポゼ、資生堂、ジ・オーディナリー、リンメル、ヴェレダといった美容・スキンケアブランドは現在、サードパーティーの小売業者を通じて、米国、英国、ブラジル、メキシコのシーインのプラットフォームで販売されている。

しかしヴェレダの英・アイルランド・マネージャーであるジェイン・スターランド氏は、シーインでの直接販売は考えていないと述べた。マーケットプレイスを評価する際には評判、認知度、環境問題への取り組みが重要な要素だと述べ、ヴェレダが直接販売を行っているアマゾンのサステナビリティーへの取り組みを指摘した。

コルゲート・パルモリーブはコメント要請に応じなかった。ハズブロの広報担当は、マドリードのイベントに参加したのは「マーケットプレイスの長所と短所について一般的に話すため」だと述べた。

サントリーの広報担当者は 「シーインのマーケットプレイスで当社の飲料を販売することはないし、その予定もない。今回は単にベストプラクティス(最善の方法)を共有するための機会だった」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

適正な為替レート、「110─120円台」が半数=帝

ビジネス

ECB、6月利下げが適切 以後は慎重に判断─シュナ

ビジネス

中国4月鉱工業生産、予想以上に加速 小売売上高は減

ワールド

訂正-ポーランドのトゥスク首相脅迫か、Xに投稿 当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中