ニュース速報

ビジネス

インタビュー:値上げ・賃上げの好循環で「日本製」確保=ミキハウス社長

2023年03月29日(水)16時16分

子供服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪府八尾市)の木村皓一社長はロイターとのインタビューで、値上げと賃上げの循環を今後も維持していく考えを示した。写真は木村社長。2021年6月、大阪市で撮影(2023年 ミキハウス提供/ロイター)

[東京 29日 ロイター] - 子供服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪府八尾市)の木村皓一社長はロイターとのインタビューで、値上げと賃上げの循環を今後も維持していく考えを示した。職人をはじめ労働力不足が顕在化する中、十分な賃金で国内外から人材を確保し、同社が売りとする「日本製」品質を保つ。

ミキハウスは昨夏に値上げを発表し、秋冬物から国内の小売価格を平均およそ2倍に引き上げた。さらに8月に投入した最高級ライン「ゴールドレーベル」には、乳児靴1足3万8500円、子供用デニムパンツ1本4万9500円、子供用ダウンコート1着24万2000円など強気の値札が並ぶ。

木村社長は「海外に対して日本の価格が安すぎた」と値上げの理由を説明。デフレが続いた国内の小売価格は、物流費なども加味した海外価格の半分程度だったという。

値上げする一方で、同社は昨年7月に賃金を12%、新卒の初任給を月20万5000円から25万円に引き上げると発表した。木村社長は、「適正な価格転嫁」は国内の生産維持や人材確保のため必要不可欠と述べた。

小さな子供が利用するミキハウスの製品は「メイド・イン・ジャパン」が売りで、訪日外国人客を含めた海外需要が大きい。16の国と地域に95店舗を展開し、海外売り上げは全体の6割を占める。木村社長は「5人ぐらい繰り返し使っても傷まない商品を作っている」と自負。値上げで確保した原資は、国内生産維持のため協力工場に支払う工賃の引き上げにも回す。

木村社長は、日本の縫製業の担い手を絶やさないため、値上げの前から断続的に協力工場に支払う工賃を上げてきたと説明。「ミキハウスと組むと工賃が高いから喜ばれる。その代わり高く売ることで消費者にそれなりに負担してもらっている」と話した。

それでも生命線である日本製を支える職人をはじめ、国内の人材不足は深刻だ。リクルートワークス研究所が今月まとめた報告書は、国内の労働力が2027年ごろから急減し、30年に341万人、40年に1100万人不足すると予測している。

ミキハウスもおよそ3割は海外で生産。木村社長は「もう子供靴はベトナムでないと作れない」とし、海外でも品質が保てるよう日本から職人を派遣するなどして対応していることを明らかにした。

英調査会社グローバルデータで小売業界を担当するマネージングディレクター、ニール・サウンダース氏は、海外成長のため生産を多様化するのは理にかなっているとする反面、品質を維持するのは大きな課題と指摘する。

木村社長は「できたら日本で作りたいが、メイド・イン・ジャパンは甘くない」と語った。「3─5年後を見据えた場合、様々な国籍の人材の採用が重要」とし、今後も適正な価格転嫁と賃上げを続けていく考えを示した。

*インタビューは28日に行いました。

(浦中美穂、Rocky Swift 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国万科の元建て社債が過去最安値、売買停止に

ワールド

鳥インフルのパンデミック、コロナ禍より深刻な可能性

ワールド

印マヒンドラ&マヒンドラ、新型電動SUV発売 

ワールド

OPECプラス、第1四半期の生産量維持へ=関係筋
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中