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インタビュー:値上げ・賃上げの好循環で「日本製」確保=ミキハウス社長

子供服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪府八尾市)の木村皓一社長はロイターとのインタビューで、値上げと賃上げの循環を今後も維持していく考えを示した。写真は木村社長。2021年6月、大阪市で撮影(2023年 ミキハウス提供/ロイター)
[東京 29日 ロイター] - 子供服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪府八尾市)の木村皓一社長はロイターとのインタビューで、値上げと賃上げの循環を今後も維持していく考えを示した。職人をはじめ労働力不足が顕在化する中、十分な賃金で国内外から人材を確保し、同社が売りとする「日本製」品質を保つ。
ミキハウスは昨夏に値上げを発表し、秋冬物から国内の小売価格を平均およそ2倍に引き上げた。さらに8月に投入した最高級ライン「ゴールドレーベル」には、乳児靴1足3万8500円、子供用デニムパンツ1本4万9500円、子供用ダウンコート1着24万2000円など強気の値札が並ぶ。
木村社長は「海外に対して日本の価格が安すぎた」と値上げの理由を説明。デフレが続いた国内の小売価格は、物流費なども加味した海外価格の半分程度だったという。
値上げする一方で、同社は昨年7月に賃金を12%、新卒の初任給を月20万5000円から25万円に引き上げると発表した。木村社長は、「適正な価格転嫁」は国内の生産維持や人材確保のため必要不可欠と述べた。
小さな子供が利用するミキハウスの製品は「メイド・イン・ジャパン」が売りで、訪日外国人客を含めた海外需要が大きい。16の国と地域に95店舗を展開し、海外売り上げは全体の6割を占める。木村社長は「5人ぐらい繰り返し使っても傷まない商品を作っている」と自負。値上げで確保した原資は、国内生産維持のため協力工場に支払う工賃の引き上げにも回す。
木村社長は、日本の縫製業の担い手を絶やさないため、値上げの前から断続的に協力工場に支払う工賃を上げてきたと説明。「ミキハウスと組むと工賃が高いから喜ばれる。その代わり高く売ることで消費者にそれなりに負担してもらっている」と話した。
それでも生命線である日本製を支える職人をはじめ、国内の人材不足は深刻だ。リクルートワークス研究所が今月まとめた報告書は、国内の労働力が2027年ごろから急減し、30年に341万人、40年に1100万人不足すると予測している。
ミキハウスもおよそ3割は海外で生産。木村社長は「もう子供靴はベトナムでないと作れない」とし、海外でも品質が保てるよう日本から職人を派遣するなどして対応していることを明らかにした。
英調査会社グローバルデータで小売業界を担当するマネージングディレクター、ニール・サウンダース氏は、海外成長のため生産を多様化するのは理にかなっているとする反面、品質を維持するのは大きな課題と指摘する。
木村社長は「できたら日本で作りたいが、メイド・イン・ジャパンは甘くない」と語った。「3─5年後を見据えた場合、様々な国籍の人材の採用が重要」とし、今後も適正な価格転嫁と賃上げを続けていく考えを示した。
*インタビューは28日に行いました。
(浦中美穂、Rocky Swift 編集:久保信博)