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アングル:新興国ファンド、15年は中韓露株好調

2016年01月19日(火)14時57分

 1月15日、新興国資産を手放す投資家の動きは1月に始まっている。株価は6年半ぶり安値に沈んでおり、原油価格の一段安によって産油国への逆風も強まっている。写真はソウルで2012年6月撮影(2016年 ロイター)

[ロンドン 15日 ロイター] - 2015年は韓国、ロシア、中国の株式に投資する新興国ファンドが運用成績の上位にランクされたが、2016年は低い経済成長や市場のボラティリティの高さが好調なファンドの試金石となりそうだ。

すでに新興国資産を手放す投資家の動きは1月に始まっている。株価は6年半ぶり安値に沈んでおり、原油価格の一段安によって産油国への逆風も強まっている。

こうした状況は、2015年に力強く反発したロシア株にも影を落とす。ロシア株で運用するファンドは昨年2桁のリターンを達成し、トムソン・ロイター傘下のリッパーのデータに基づく新興国ファンド運用成績でトップ10のうち3本を占めていた。

2位にランクされた「パーベスト・エクイティ・ロシア」に助言するTKBインベストメント・パートナーズのVladimir Tsuprov最高投資責任者は「主要なリスクは原油価格に関連するものだ」と指摘する。

9位の「ネプチューン・ロシア・アンド・グレーターロシア・ファンド」の運用を担当するトーマス・スミス氏はロシア経済が一段と縮小し、財政赤字は国内総生産(GDP)比で3%以上になると予想する。

一方、韓国経済の成長鈍化や輸出低迷にもかかわらず、運用成績で1位となったインベスコの「コリアン・エクイティ」は、国内市場で独占的地位にある消費者関連銘柄に投資したことが奏功したと、運用責任者のSimon Jeong氏は話す。

激しく乱高下した2015年を乗り切った中国株ファンドは3本がトップ10入り。

半面、ランキングで最も下位を占めたのはブラジルや中南米全般の株式ファンドだった。ブラジル経済は汚職スキャンダルや財政赤字の拡大、インフレ高進に打撃を受けている。

リッパーのグローバル新興国株式ファンド部門の平均運用成績はマイナス9.5%。EPFRグローバルの暫定データによると、2015年に新興国株式ファンドから約692億ドルの資金が流出したという。

債券投資では、昨年高い投資収益をもたらしたウクライナ債、アルゼンチン債などがねらい目だったが、同時にリスクを慎重に避けることも重要だった。

2位の「スタンダード・ライフ・インベツメンツ・エマージング・マーケット・デット・ファンド」の運用責任者、リチャード・ハウス氏は「ボラティリティは高く、流動性は乏しく、ファンドの成績は全体的に思わしくなかった」と述べた。

リッパーのグローバル新興国債券ファンド部門の平均運用成績はマイナス5.7%。現地通貨建てファンドの下げが最もきつく、JPモルガンの現地通貨建てソブリン債指数の2015年の下落率は15%を超えた。これに対し、ハードカレンシー(国際決済通貨)建てソブリン債<11EML>と社債<.JPMCE>の指数はプラス1%強だった。

EPFRグローバルによると、2015年に世界全体で新興国債券ファンドから326億ドルの資金が流出した。

1位となった「M&Gエマージング・マーケッツ・ボンド」の運用担当者、クローディア・カリッチ氏は、現地通貨建て債の保有比率を10%に抑え、イラク債など商品相場の下落に影響される債券への投資を避けたことをアウトパフォームの理由に挙げた。

さらに、ウクライナとアルゼンチンの債券相場上昇による収益も大きかった。同氏は2016年は中米やカリブ海諸国のハードカレンシー建て債券を優先したい考えだ。こうした国々の経済は海外出稼ぎ労働者の送金に頼っており、米雇用回復による恩恵を受けるはずだという。

ハウス氏によると、ブラジルやベネズエラのような市場では資産価格が極めて低水準に落ち込んでいるため、政治状況の変化に伴って大幅な価格上昇が見込めると話す。

一方、カリッチ氏は2016年も引き続きテールリスク(確率は低いが発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスク)が高まるだろうと警告する。商品相場の下落や金融コストの上昇が続く流れは変わらないとし、「簡単な年ではないだろう。しかし、リスクを適切に管理すればチャンスはある」と述べた。

ロイター
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