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入管法「改悪」の前に目の前の難民を直視すべき

東京出入国管理局 Yuya Shino-REUTERS
<ただでさえ少ない難民認定をさらに減らそうとしているが、なぜそこまで目を背けるのか>
入管法改正案の採決について6月6日、立憲民主党と社会民主党は合同で斎藤法相への問責決議案を提出するなど、攻防が続いている。長期収容問題の解決策として難民申請の3ストライク制を盛り込むなど、ますます難民申請者の人権を尊重しない方向へと改正が進められているとして、野党や市民から批判を受けている同法案だが、ここにきて与党が主張する立法事実すら怪しくなっている。
難民審査は適切に行われているのか
入管法改正案の立法事実については、柳瀬房子難民審査参与員の「難民をほとんど見つけることができない」という発言が根拠となっていることは、出入国在留管理庁自身も認めている。
世界各国の難民認定率については調査機関ごとに幅があるが、G7の認定率は概ね10%~50%の認定率となっており、難民認定数は、イタリア以外は1年で5桁の人数となっている。しかし、日本の難民認定率は0,6%であり、認定数は1年で2桁の人数となっており、突出して低い。この少なさを正当化するためには、なぜか奇跡的な確率で日本だけ真の難民が来る確率が低くなっているという主張をするしかないのだが、柳瀬参与員の「難民をほとんど見つけることができない」という発言は、それを堂々と述べているということになる。
ところが、のちの参議院法務委員会で、柳瀬参与員は2022年、審査対象の25%を占める1231件の審査を処理していたことがわかった。勤務日数および従事時間で割ると、1件あたりの審査時間は数分程度ということになる。
この時間で、果たして当該の人物が難民かどうかを判断することができるだろうか?これでは「難民をほとんど見つけることができない」のも当たり前だろう。難民が、自身が難民である根拠を一目で分かる資料として携帯して来日できるケースは少ない。難民であるかどうかの審査は時間をかけて慎重に行う必要がある。わずか数分で難民かどうかの判断をするというのは、あまりにもずさんな審査が行われているということで、審査に落ちた難民申請者の強制送還を認める入管法改正案は、あまりにも危険な法案であることが示された。
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