コラム

地域活性化アイデアで生まれ変わる廃校、少子高齢化進む農漁村に新たなビジネスチャンス

2016年06月14日(火)20時29分

<日本同様に地方での少子化が進む韓国。子供のいなくなったところでは小学校などが廃校になってしまうが、その校舎を再利用してキャンプ場や英語会話の体験施設にするなど、観光資源にする自治体が出てきている>

 筆者の母親の故郷は、韓国戦争が起きたことを1年ぐらい経ってから知ったというほどの田舎である。母は片道4キロ以上歩いて小中高校に通ったそうだ。山を越えて川を渡り学校につくと、お弁当は自然にビビンバプになっていたとか。お弁当箱が上下左右に揺れ続けビビンバプになるほど大変な通学路だったというわけだ。

 そんな田舎にも今は大きな道路ができてスクールバスもある。人口が少ないので子供たちは未だ4Km離れた学校に通わないといけないが、もう歩いて学校に行くことはなくなった。給食があるのでお弁当もいらなくなった。昔とは比べにならないほどよくなった母の母校だが、廃校が検討されている。急速な少子高齢化により入学生がいないのだ。

 全国の教育庁の統計によると、1982年3月から2015年3月まで廃校した全国の小中高校は3725校(暫定値)、年間平均113校が廃校になった。廃校は特に農漁村に集中している。同期間中、ソウル市内の学校で廃校になったのは1校しかない。

 廃校の基準は地域の教育庁(教育委員会)ごとに違うが、平均的に在学生が15人以下だと統廃校の対象になる。しかしどの地域もできるだけ廃校にしない方針で、保護者の3分の2以上が廃校に同意しない限りは学校の運営を続けている。韓国最南端の島「マラド」は在学生が一人もいなくなった小学校が廃校の危機に陥ったが、もしかして、という希望を持って、済州教育庁は廃校ではなく休校にした。

 廃校にしないためには、農漁村の子供の人口を増やすしかない。韓国の自治体は地域活性化のため、「帰農」サポートを手厚く行っている。住宅や農地を安く貸し、営農指導もする。田舎は生活が不便というイメージを払拭するため、病院やコンビニを建て、自宅で高速インターネットが使える環境もばっちり整えている。子供の教育のためスクールバスはもちろん、村営塾、村営家庭教師を利用できる自治体もある。農漁業の後を継ぐ青年の婚活は、それはもう自治体総力で取り組んでいる。それでも農漁村の人口は減り続けている。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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