コラム

「この名前を与えてもらって感謝」油井亀美也宇宙飛行士に聞いた、「亀」の支えと利他の原点

2025年06月10日(火)22時30分

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「亀」をモチーフにしたデザインの個人ロゴマーク(6月6日) 筆者撮影

──2015年に初めて宇宙に行ってから、2度目を迎える今回までの10年間で、油井さんが一番「コツコツと継続して頑張ったな、達成できたな」と思うことは何でしょうか。

油井 一番いい経験だったと思うのは、宇宙飛行士グループ長をさせていただいたことです。

管理職として色々な計画を立てたり、手続きをしたりということをやらせていただいたのが良かったなと思います。そこで、自分自身の宇宙飛行士としてのキャリアだけでなく、若い人たちのキャリアを見据えて「今、何が必要なのか」という幅広い視点で見ることができるようになりました。それがあるからこそ、今回のミッションで「じゃあ、自分は何をしなくてはいけないのか」という目標を定めることもできました。


──グループ長になったのは、宇宙飛行士同士の話し合いによってですか? それとも自薦ですか?

油井 いえいえ、普通に上司が決めてという流れです。

──チームが油井さんの適性を見極めてということですね。グループ長の視点では、JAXA宇宙飛行士というのはどんな団体と言えるでしょうか。

油井 人数が少ないだけあって、非常に洗練されたグループですね。あとは本当に色々な方がいますね。バックグラウンドも全然違いますし、性格も違いますし。だからこそ、様々な場面で活躍ができるグループだなと思っています。

ただ、私自身が「もうちょっとこうなるといいな」と思ったところもあります。例えばミッションのアサインです。アサインするのは私の権限ではなかったのですが、それぞれの宇宙飛行士には特徴があるので、「もう少し同じ訓練ではなく違った訓練を受けるようにして特徴を伸ばしていき、ミッションにはその特徴に合った飛行士をアサインするようにしたほうがよいのではないですか」と提案したこともありました。そのほうが、もっと面白い宇宙開発になっていくんじゃないかな、と個人的には思っています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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