コラム

性犯罪や浮気の証拠に? セックスを通じて、お互いが持つ「独自の微生物」が交換されていることが判明

2025年02月21日(金)20時20分

マードック大学のブレンダン・チャップマン博士は「これまで、膣と陰茎の微生物を法医学的観点から調査した研究はほとんどありませんでした。この研究結果は、性行為後の異性愛カップルに微生物が痕跡を残すことを実証しています」と語っています。

今後は、性行為後に移植された性器官微生物がどのくらい持続するか、性行為によって乱れた本来の性器官微生物叢がベースラインに戻るまでにどのくらいの時間がかかるか、などを研究していくと言います。また、女性の膣の性器官微生物は月経中に変動することが観察されたため、ベースライン・サンプルの最適な採取時期や変動制御なども調査していくと言います。

実際に性犯罪の証拠として使われるようになるには、第二の指紋にもなりうる性器官微生物叢のデータベース化の是非など倫理的な問題もクリアしなければならないでしょう。とはいえ、この検査が一般的になれば、犯罪捜査だけでなく浮気の確実な証拠として離婚訴訟にも使われる未来があるかもしれません。「微生物叢が自分の過去の行動を刻み、暴く」と考えると怖くもあり、身が引き締まる思いがしますね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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