コラム

大気中のCO2濃度、年増加量が観測史上最大に...日本の人工衛星「GOSATシリーズ」は温暖化対策にどう貢献するのか

2025年02月18日(火)11時25分

「いぶき」によるCO2の全大気平均濃度(10~24年)と年増加量(11~24年)の観測結果を見ると、CO2の全大気平均濃度は10年には388 ppmでしたが、その後は右肩上がりに上昇し、2024年には421 ppmを越えました。対して、年増加量は、過去14年間の平均値は2.4 ppmでしたが、2024年には3.5 ppmとなり、過去最大(これまでの最大値は16年の3.1 ppm)となりました。

23年から24年にかけての年増加量が過去最大となった理由について、JAXAは、①23~24年にかけて発生していたエルニーニョ現象に起因する高温や干ばつ、②森林火災によるCO2排出量の増加、③陸域植生の面積や光合成量の減少、④人為起源CO2排出量の増加の影響などを挙げています。

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「いぶき」による二酸化炭素の全大気平均濃度の年平均値(黒折れ線グラフ、2010年から2024年)とその年増加量(赤棒グラフ、2011年から2024年) (C)JAXA/NIES/環境省

気候変動の監視を強化

ただし、24年に産業革命以前の水準の世界年平均気温を1.5℃以上上回ったことについて、JAXAは「危機感を持って受け止める必要がある」としつつも「年々の変動もあるため、中長期的な傾向を確認する必要があり、昨年の状況のみでパリ協定の1.5℃ 目標を超過したとは言えない」と慎重な態度で説明しています。

また、日本に目を向けると、2024年の日本の平均気温の基準値(1991年から2020年の30年平均値)からの偏りは+1.48℃ で、1898年の統計開始以降、2023年を上回り最も高い値となったそうです。

JAXAは気候変動の監視を今後も引き続き強化していくことを表明し、気温上昇の原因解明のため、今後は今回得られた「いぶき(1号機)」のデータだけでなく、GOSATシリーズのデータ全体を使った詳細な解析を実施すると話しています。

2050年までにカーボンニュートラル(CO2排出を実質ゼロにする)の実現を目指す日本のCO2排出量は、約10億3700万トン(2022年度)です。世界では中国、アメリカ、インド、ロシアに続く5番目に排出量が多いものの、2013年度と比べて21.3%減少しています。

国連に提出している現行の目標は「30年度に46%削減」で、次の目標は「35年度に60%削減」(いずれも13年度比)となる見込みです。しかし今の削減ペースを守る目標であるため、「先進国の日本はもっと踏み込んだ削減をすべきだ」という批判もあります。

国内のCO2削減において国際社会で存在感を示すとともに、「いぶき」による科学データによって世界の地球温暖化対策を主導する未来を期待したいですね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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