コラム

ローマ法王が中国と握手して「悪魔の取引」を結ぶ日

2018年03月19日(月)10時30分

法王は、共産党政権下で神と隔絶した信者を救済したいらしい。だが中国にはクリスチャンに配慮し、人民に信教の自由を与える気などない。バチカンと台湾との外交関係を断ちたい、というのがその真意だ。

バチカンはヨーロッパで唯一、台湾と外交関係を持つ国というだけではない。まさに世界の頂点に立つ法王庁の決断が、台湾の生存空間を狭め、弱り切った外交活動にとどめを刺すことになるからだ。

中国共産党にとって、国際社会と交わした約束など守るに値しない。97年の香港返還で共産党は、「高度の自治は50年間変わらない」と、イギリスと合意。今では香港で自治は形骸化し、民主化と自由を維持したい住民が弾圧されている。

それでもバチカンが中国と握手しようとするなら、まさに悪魔と取引しようとする愚行としか言いようがない。

<本誌2018年3月20日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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