ニュース速報
ワールド

アングル:「オルバン長期政権後」に賭ける投資家、ハンガリー総選挙に期待

2026年04月11日(土)16時49分

3月23日。ブダペストで開かれた集会に出席するオルバン首相。REUTERS/Marton Monus

Marc Jones Gergely Szakacs

[ロン‌ドン/ブダペスト 9日 ロイター] - 12日にハンガリー議会総選挙を控え、国際投資家ら‌は、かつては想像もできなかった結果に備えている。欧州連合(EU)の目の上のたんこぶであるオル​バン首相が、16年にわたる政権運営を経て下野に追い込まれる可能性だ。

オルバン氏は移民問題から対ロシア関係に至るまで頻繁にEUと対立してきただけに、今回の選挙は欧州で今年最も金融⁠市場を動かすものになると見られている。

市場ではオルバ​ン氏に関連する企業の株価が急落しているほか、為替ボラティリティー指標は通貨フォリントの急変動を示唆しており、投資家が明らかに政権交代に賭けていることが分かる。

英アバディーンの新興国債券ポートフォリオマネージャー、ビクトル・サボ氏は「市場はオルバン氏の敗北を織り込みつつあるようだ」と語る。同社はこの1カ月間、ハンガリー国債への投資を増やしてきた。

オルバン氏の立場は、3年間にわたる経済停滞、ウクライナ戦争開始以降の生活費高騰、そして同氏とロ⁠シアとの関係露呈によって危うくなっている。世論調査では、オルバン氏(62)の与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が、マジャール氏率いる野党「尊重と自由(ティサ)」に敗れる可能性が示されている。ただ、政治アナリストは、オルバン⁠氏が政権維持​を図る可能性も含め、結果の振れ幅は大きいとみている

マジャール氏はかつてフィデスに属し、オルバン氏の盟友だった。

投資家の間ではハンガリー国債に注目が集まっている。ティサ党が勝利すれば、EUによる約180億ユーロ(約3兆3390億円)の資金拠出凍結措置が徐々に解除される可能性があるからだ。この資金は同国の今年の予想国内総生産(GDP)の約8%に相当する額だが、現在はハンガリーが民主主義の基準を満たしていないとの懸念から凍結されている。

サボ氏は、「ハンガリーにとって投資は長年の弱点で、この資金提供は投資促進に不可欠な後押しとなるだろう」と説明。経済成長率が高まれば政府財政の助けにもなると述べた。

<接戦>

ハンガリーの財政赤字は現在、GDP比5%超とEU最大級。債務の対GDP比率も70%を⁠超えて上昇しており、格付け会社S&Pグローバルによるハンガリーの格付けは「ジャンク(投資不適格)」級の一段階‌手前だ。

政治アナリストらは、世論調査通りの選挙結果にならない可能性もあると強調している。「親EUのティサ党勝利」という、市場にとって最も好ましい⁠結果に賭けて⁠いる投資家にとってはリスクだ。

政治科学者のアンドレア・サボ氏は「現在の状況では、ティサが憲法改正に必要な圧倒的多数議席を獲得する結果から、フィデスが過半数を維持する展開まで、あらゆる可能性が考えられる」と指摘する。

サボ氏は、世論調査がフィデスへの支持を過小評価している可能性があると釘を刺す。また、極右政党「われわれの祖国」が「キングメーカー」となるのに十分な議席を獲得する可能性もあり、その場合はオルバン氏とフィデスが政権を維持する道が開かれるという。

いずれ‌にせよ、EUで最も長く政権を維持しているオルバン氏が抵抗せずに退くとは限らず、新政権に移行する場合でも一悶着あるだろうと一部​のアナリスト‌は警告している。

ハンガリーの為替、株式、債券⁠市場はティサ党勝利を見越しておおむね堅調に推移している。だが​ティサ党が憲法改正に必要な圧倒的多数議席を獲得しない限り、オルバン氏の政策を覆すことは、最も物議を醸している政策でさえ難航するだろう。JPモルガンの予想では、ティサ党が圧倒的多数を獲得する確率は5―10%にとどまる。

キャピタル・エコノミクスのアナリストは「欧州委員会はこれまで改革に応じて資金提供を実行してきたため、ティサ政権になれば限定的な額を確保できる可能性が高い」とした上で、「EUが資金拠出凍結解除の基準を正式に引き下げる可能性は低い」と述べた。

<フォリントとウクライナに追い風>

ハンガリーの選挙結果は他国にも影響を及ぼ‌すだろう。EUが目指すウクライナに対する900億ユーロ(約1051億5000万ドル)の融資は現在、オルバン氏が阻止している。右派ポピュリスト勢力が政権獲得を狙う他の欧州諸国にも影響しそうだ。

一方、オルバン政権下でユーロに対して約20%下落した通貨フォリントは、政治的リスクを巡​って急変動してきた歴史があり、今後もそれが続く見通しだ。

短期の為替ボラテ⁠ィリティー指数は、新型コロナウイルスのパンデミック開始時や2022年のウクライナ戦争開始時よりも高くなっている。モルガン・スタンレーのアナリストは、ティサ党が勝利すればフォリントは対ユーロで最大10%急騰すると予測する一方、JPモルガン・チェースは、オルバン氏が政権を維持すれば1ユーロ=400フォリントまで反落するとみ​ている。

国際通貨基金(IMF)は、選挙結果がどうなるにせよ、ハンガリーはバッファーを再構築し成長を回復させるため、引き締め的な金融政策と構造改革が必要だと主張する。

資産運用会社アリアンツの新興国筆頭ポートフォリオマネージャー、ジュリア・ペレグリーニ氏もハンガリー国債を購入している。同氏は「ティサ党は基本的に、より強力で独立した機関および、EUとの関係強化を公約に掲げている」と指摘し、「これは経済に好影響を及ぼすだろう。それこそが関心事だ」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ平和評議会、資金不足報道否定 「要請全額満たさ

ワールド

情報BOX:米とイラン和平交渉、知っておくべき主な

ワールド

米とイランの交渉団がパキスタン入り、レバノン停戦な

ワールド

イラン最高指導者、顔と足の負傷回復途上 主要問題の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中