コラム

世界各国で続発、中国人が突如「姿を消す」事件...見えてきた黒幕「海外110」とは?

2022年10月22日(土)17時27分

「自発的」な帰国とするが、実態は?

このケースの問題は、国外で警察行為を行うことが国際的に認められないだけでなく、決して「自発的」に帰国させていないことだ。報告書は、「自発的」に帰国や当局への協力をさせるために「中国当局は公式に、中国国内にいる子どもの教育を受ける権利を奪ったり、家族や親戚の活動を妨害するなど、徹底的に『連帯責任』を問う手法を使えと指導している」と指摘している。

それ以外にも、中国国内に残っている家族などの、健康保険を奪ったり、パスポートを無効化したり、公的な補助金をすべて停止するといった行為も行われているという。

さらにそこで、中国人同士を監視させるような動きを促したり、公安や、スパイ行為を行う情報機関の協力者にしたといったケースもあると見られている。

ちなみにこの報告書をまとめた人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」は、もともと中国を拠点にした人権団体で、スウェーデン人やアメリカ人、イタリア人、イギリス人などに加え、中国人弁護士団などが集まって活動している。もともと前身組織を2009年に上海にて設立後、2016年に当局からメンバーが拘束されるなど弾圧され、現在は、スペインに拠点を置いて活動している。

この「海外110」については、「スパイチャンネル~山田敏弘」でさらに詳しく解説しているので、ぜひご覧いただきたい。

プロフィール

山田敏弘

国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。クーリエ・ジャポンITメディア・ビジネスオンライン、ニューズウィーク日本版、Forbes JAPANなどのサイトでコラム連載中。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官』、『サイバー戦争の今』、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』、『死体格差 異状死17万人の衝撃』。最新刊は『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』。
twitter.com/yamadajour
YouTube「スパイチャンネル」
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