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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツ・メルヘン街道開設50周年!グリム童話ゆかりの魅力あふれる地へ その2 

3.「笛吹き男」伝説の街ハーメルン

ドイツ中央部、ヴェーザー川沿いにひっそりと佇むハーメルン(Hameln)は、中世の面影を色濃く残す美しい街。そしてここは、世界中に知られる不思議な物語、「ハーメルンの笛吹き男」の舞台として注目を浴びている。

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Foto ©norikospitznagel 市内散策中に笛吹き男に出会えるかもしれない

その伝説は1284年に遡る。ネズミの大群に悩まされていたハーメルンの街に、派手な衣装をまとった謎の笛吹き男が現れた。「報酬をもらえるならネズミを追い払う」と申し出た男は笛を吹いてネズミをおびき出し、ヴェザー川へ導いた。男の後に続いたネズミは川で溺死したが、町民は約束の報酬を支払うことを拒否した。激怒した男は、再び笛を吹き、今度は130人の子どもたちを連れ去ってしまったという伝説だ。

空恐ろしい伝説は、やがてグリム兄弟の童話として世界中に広まり、ハーメルンは笛吹き男とネズミの街として観光の中心地となった。

ちなみに路上にはめ込まれているネズミのプレートは、「ネズミ捕り男の道」と名づけられた散策コースの目印だ。このプレートを辿って歩くと、結婚登録役場の「結婚式の家」、「マルクト教会」など旧市街の要所めぐりが気軽にできる。

4. 音楽隊が夢見た北の古都ブレーメン

ドイツ北部の美しい街ブレーメン(Bremen)は、メルヘン街道の終着点。ハンザ同盟時代から交易の要所として栄え、現在でも美しい中世の街並みが残り、観光地としても多くの人々を魅了している。

壮麗な市庁舎とその前に広がるマルクト市庁舎西側には、かの有名な「ブレーメンの音楽隊」の像が静かに佇んでいる。

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Foto ©norikospitznagel ブレーメンで最も有名なランドマーク。このブロンズ像は1953年、グリム童話を記念して製作された

童話によると、老いたロバ、犬、猫、そして雄鶏は音楽隊になる夢を胸にブレーメンを目指すが、旅の途中で泥棒の家を見つけ、追い出してそこに住み着いてしまう──つまり、ブレーメンには辿り着いていないことになる。

とはいえ、彼らが憧れたブレーメンは、童話にふさわしい歴史とロマンに満ちた街として訪れる人を魅了している。

音楽隊ロバの像にそっと触れると願いが叶うとも言われており、旅人たちはその足元で記念写真を撮ったり、静かに祈りを捧げたりしている。そんな風景を目にすると、微笑まずにはいられない。

ドイツ観光局(GNTB)のペトラ・ヘドルファー会長は、メルヘン街道開設50周年にあたり、こう語っている。

「観光街道は、世界中から訪れる潜在的な旅行者がドイツの多様な観光名所を巡るための非常に効果的なマーケティング・ツール。これは国際的にも非常に効果的」

「グリム童話は世界中で知られ、愛されており、決して子どもたちの間で時代遅れになっているわけではない。例えばディズニー映画やミュージカルなど、ドイツの童話を題材にした数多くの国際的な映画化作品からも後押しされている。グリム童話は、文化に興味を持つ世界中の観客にとって、インスピレーションの源であり続けているということだ」

2回にわたり、グリム童話ゆかりの地を簡単に紹介した。メルヘン街道開設50周年の今年、グリム兄弟の足跡を辿ってみるのはいかがか。

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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