コラム

WTOにおける知的財産権を巡る新たな戦いは始まったばかり

2022年06月24日(金)11時50分

先進国の企業投資を妨げる重大な問題に発展する可能性

この問題は製薬会社だけでの問題ではなく、他の先進国の企業投資を妨げる重大な問題に発展していく可能性がある。新型コロナウイルスに関する特殊事例として他山の石だと他業界の人々が考えているとしたらそれは大きな間違いだ。

なぜなら、この事例はWTO閣僚級会合による合意として行われるからだ。WTOは様々な産業分野の協議が行われるものであり、先例が出来上がればそれが必然的に他分野にまで適用が拡大していくことになるだろう。

WTOは「関税その他の貿易障害を実質的に軽減し、及び国際貿易関係における差別待遇を廃止する」ことを実施する機関であり、先進国の企業に対して知的財産権を放棄させるための機関ではない。仮にワクチンや治療薬の世界的な供給状況に問題があるとしたら、それは貿易障壁などの各国政府が意図的に作り出している阻害要因を是正することを優先するべきだ。WTOが本来の趣旨を失うことは、自由市場を守るシステムの一つが失われることを意味する。

日本政府は知的財産権こそが日本の生きる道であることを認識し、この問題に対して真剣に取り組むことが必要だ。それは中長期的には人類全体の繁栄に繋がる道である。知的財産権を守るための新たな戦いは始まったばかりだ。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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