コラム

「耳をすませば」の舞台、青春の記憶呼び起こす多摩の丘

2019年03月22日(金)14時30分

日野市平山の丘陵地帯から 撮影:内村コースケ

第3回 東京・調布駅前→豊田駅前
<平成が終わり、東京オリンピックが開催される2019年から2020年にかけて、日本は変革期を迎える。名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた。愚直な男たちの旅の記録を、ゴールまで連載でお届けする>

第2回 若い世田谷にも押し寄せる高齢化の波

◆調布駅前の塾からスタート

01001.jpg

「日本横断徒歩の旅」全行程の想定最短ルート :Googleマップより

これは、東京湾の晴海埠頭から新潟県糸魚川市の日本海まで徒歩で繋ぐ旅の記録である。第3回は、調布駅から徒歩5分のその名も『調布ゼミ』という小さな塾の前からスタートした。なんでそんなピンポイントな場所かというと、そこの塾長が僕の友人(高校時代の同級生)だからである。明大前駅から歩いた前回は、彼に会いに行くことを励みにしてここまで進んだ。

というわけで、今回は、平日なので第1回、第2回を一緒に歩いてくれたサラリーマンのヤマダ君は休み。代わりに、塾が始まる前の午前中だけ塾長が同行してくれることになった。

塾長は東大卒のインテリだが、『調布ゼミ』は、有名大学に入ることだけを目的にしている普通の進学塾とは違う。彼は高校時代から、弱きを助け強きをくじく「漢」であった。コワモテな外見とは裏腹の優しさは今も全く変わっていない。『調布ゼミ』は全ての子どもたちにチャンスを与える。その看板には、「完全個別 調布ゼミ 中・高・大学受験・補習 不登校・発達障害」と書かれている。

◆ポスト平成の教育理念

03007.jpg

調布市内

これまでの日本は、欠点を徹底的に矯正する教育と社会の同調圧力により、平均点の高い均質な「企業戦士」を育ててきた。そこそこに高い平均的な能力と同じような価値観を持った人間の集合体が「会社」という鵺(ぬえ)のような生き物を形成し、経済発展を成し遂げていった。それは、戦後の焼け野原から一日も早く世界の表舞台に復帰するためには、おそらくは最良の手段だった。

しかし、インターネットの普及などにより世界が狭くなった今は、日本の外の世界の常識を無視するわけにはいかなくなっている。世界では、ポジションごとの役割分担が徹底したアメフトのチームのような、各分野の専門家が集まって一つのことを成し遂げる個人主義をベースにしたチームワークが主流だ。今、どこの進学校でも掲げている「グローバル教育」とは、要は個性を尊重したうえで得意分野を伸ばすことを目指す欧米型の教育だと言えよう。

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

今、あなたにオススメ

キーワード

ニュース速報

ビジネス

見通し実現していくか、内外情勢や市場動向を丁寧に点

ビジネス

日経平均3万8000円回復、米中の関税引き下げ好感

ビジネス

アマゾン、個人宅配でフェデックスと提携 一部大型貨

ワールド

新たな攻撃あれば「テロリストの隠れ家」標的に、印首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story