コラム

若い世田谷にも押し寄せる高齢化の波

2019年03月13日(水)16時30分

調布駅前 撮影:内村コースケ

第2回 東京・明大前駅→調布駅前
<平成が終わり、東京オリンピックが開催される2019年から2020年にかけて、日本は変革期を迎える。名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた。愚直な男たちの旅の記録を、ゴールまで連載でお届けする>

第1回 平成の終わりに、東京から新潟まで歩くことにした(東京・晴海→明大前駅)

◆東京都民独特のヒエラルキー

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「日本横断徒歩の旅」全行程の想定最短ルート :Googleマップより

前回記念すべき第1回をお届けしたこの旅は、日帰りで繋いでいくスタイルだ。半日ほど歩いたら一旦解散し、後日出直して前回到達点から再び歩き始める。初回は晴海埠頭から約20km西へ行った京王線の明大前駅まで歩いた。今回はその明大前駅から再スタートする第2回である。メンバーも日替わりで、言い出しっぺの僕は毎回参加してルートを繋ぐが、同行者の参加は自由。今回は前回参加の2人のうちの1人の、元某大学山岳部部長のヤマダ君と2人で歩いた。

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今回は、ヤマダ君(左)と2人で明大前駅からスタート

前回、東京人の感覚では「環七を超えたら田舎」だと書いたが、環七の先の明大前スタートの今日は、確実に23区を出るだろう。つまり、都民ヒエラルキー的には"未開の地"レベルの田舎に入っていくことになる。もっとも、これは世界的に見れば日本の首都圏在住者にしか通じない超が5、6個はつくローカルネタである。さらには、今の若い人や70代以上の高齢者には、東京の中にも都会と田舎があると言ってもピンと来ないかもしれない。平成のバブル期を生きた我々中高年世代特有の感覚だと思う。

この原稿を書いている直前に、大ヒット中の映画『翔んで埼玉』を見た。この特定の世代の日本人に横たわる都会>田舎のヒエラルキーを、埼玉県(ダサイタマ)を軸に壮大なギャグにした魔夜峰央の漫画が原作の邦画だ。物語の中では、東京都民と埼玉をはじめとする県民の間だけでなく、東京都民の中にもヒエラルキーが存在する。例えば、主人公らが通う高校は「都会度」でクラス分けされており、赤坂や青山に住む者のA組から順に、田無、八王子など都下の住民のE組へと落ちてゆく(埼玉は番外のZ組)。

このクラス分けを説明する劇中のくだりは、僕ら世代の東京出身者にとっては「あるある」である。「海外留学経験のある港区民」が最上位なようなので、帰国子女の元目黒・品川・世田谷区民で港区にも短期間住んだことのある僕はさしずめB組だ。しかし、それは子供時代の話で、その後は下町に移り住み、社会人になってからは地方を転々とした。それこそ映画の冒頭で全力でDisられていた埼玉県熊谷市にも3年ほど住んだことがある。そして、僕は今、長野県で山暮らしをしているのだが、すっかり田舎慣れして、かつてのような居住地を基準とした差別感情は完全に消えた。いったいあの感覚はなんだったのだろう。

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

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アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

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