コラム

日本は働き手の「やる気」で世界最低...石破首相、「無気力ジャパン」をどうしますか?

2024年10月23日(水)20時25分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
日本政治, 石破茂

KIM KYUNG-HOONーPOOLーREUTERS

<石破首相は「幸せな日本を取り戻す」と言うけれど...頑張って働くことに価値を感じない若者たちが増えているなか、それは可能なのか?>

10月、日本は新たな首相を迎えた。9月の自民党の総裁選では、決選投票に残った2人の候補者に5分間ずつのスピーチの時間が設けられたが、そのスピーチで石破茂氏は60年前の故郷の夏祭りのことを話し「今ほど豊かではなかったかもしれないけれど、大勢の人が幸せそうでした。もう一度そういう日本を取り戻したいと思っています」と訴えかけた。

私はこの言葉が非常に気になった。60年前とは1964年、高度経済成長期ど真ん中で東京オリンピック開催の年だ。戦後復興を果たし、これから日本が豊かになっていく時代で、現在よりは貧しかったが、人々は夢と希望に満ちあふれていたことだろう。


私にはドイツに何人か親戚や友人がいるが、彼らから「最近のドイツの若者は働かない」とよく聞く。SNSの影響で、インスタグラムやTikTokで簡単に大金を稼ぎたいと考えて、地道な仕事や体を動かす仕事が若者から敬遠されているという。

ドイツは税金が高い代わりに社会保障が充実していることが知られているが、失業者に対する行政からの生活支援が厚く、一定水準の生活ができるため、働かない若者が増えている。労働して納税している層はこれに腹を立てていて、政府は就労サポートを増やして生活支援をカットする案を検討しているのだそうだ。

振り返って日本だが、若者の労働意欲は総じて低いと私は感じる。人手不足で売り手市場のせいもあるのだろうが、若者を採用してもすぐ退職してしまうし、そもそも頑張って働こう、仕事を学ぼうという意欲が1日目から感じられない。

私の周りにはベンチャー企業の社長がたくさんいるが、皆同じことを言う。まだ安定しない、仕事が多い、でも頑張って会社を成功させれば社員にも大きなリターンがある、そんなベンチャー企業に志望してくる若者でさえ、ワークライフバランスが一番大事であり、長時間勤務や多岐にわたる業務を任されるのを嫌う。

いやいや、体力があってまだ子どももいない、楽しんでいくらでも働ける、必死に働いた分だけ知識やスキルを吸収できるのが若者である。私は何も長時間勤務を強いるブラック企業で我慢して仕事をし続けろ、と言っているわけではない。

自分が夢や情熱を傾けられる仕事を持ち、懸命に働いて成功をつかもう、という熱意のある若者が減ってきているような気がする。転職のハードルが以前より下がっているのは良いことだが、現在の職場で何も習得せず転職を繰り返して自分の価値を下げていくケースもよく見かける。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story