もう「安全な国」でなくなった日本が、若者を「自助」で追い詰める危険さ
日本で事件を起こすのは、無職の人が多い気がする。一時の状況であっても仕事がなければ社会に参加できず、ほぼ「非社会人」の状態になってしまう。仕事がない原因はさまざまだから、「ゴミ。捨てていい。何もできない人間だから」と結論付けるのは間違いだ。でも日本では人生のパターンが決まっていて、その道をうまく進めない人は社会から追い出されるリスクが高い。
そのうえ政府が「自助」を強調すれば、社会にSOSを出すために他人を殺そう、と思ってしまう若者が出てきてもおかしくない。国は「まず自助」ではなく、真逆のメッセージをできるだけ早く出すべきだ。それは「何か悩みがあったら、直ちに相談してください。社会と国が君を助けるから」ということ。
つまり「まず自助、次は共助、最後に公助」と順番をつけるのではなく、「自助・共助・公助」を同時に動かしてほしい。時間がないのだから。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。

アマゾンに飛びます
2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない 2025.04.25
小池知事に聞いてほしい、東京都が学ぶべきEUの留学制度 2025.04.09
12万人が関与、起源は台湾...中国「詐欺組織」が東南アジアで巨大化した理由 2025.04.03
生成AIで記事も動画も作れる今の時代に、記者としてすごく悩んでいること 2025.03.29
日本では起こりえなかった「交渉の決裂」...言葉に宿る責任感とは? 2025.03.21
韓国大統領の弾劾裁判騒動に思う、「大統領降ろし」という当然の権利 2025.03.08
日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻な問題 2025.02.26