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カンボジア詐欺工場に「人身売買」されたアフリカ人掛け子が直面する、解放後の「人道危機」とは

Stranded in Cambodia

2026年2月17日(火)17時35分
イバン・フランチェスキーニ、シャーロット・セティジャディ(ともに豪メルボルン大学講師)、リン・リー(伊ベネチア大学)
詐欺グループの拠点

カンボジア南部カンポット州で摘発された詐欺グループの拠点 SOVEIT YARNーREUTERS

<国際機関は解放されたアフリカ人掛け子に対して非常に冷淡な姿勢を取っている>

「戦争から逃げて、また戦争に巻き込まれた」。アフリカ中央部出身の青年エリックは、気が付けばカンボジアで特殊詐欺グループの拠点にいたわが身をそう語る(安全のため出身国と本名は伏せる)。

【動画】カンボジアの詐欺拠点に侵入した際の映像

母国の紛争から逃れて極貧の生活をしていたエリックは、カンボジアで月給2000ドルの仕事を紹介するというメールを受け取った。首都プノンペンの空港に着くと、そのままタイ国境近くの詐欺グループの拠点に連れて行かれた。


だましている相手に警告しようとして監督者に見つかったときは、死ぬかと思うほど殴られた。一緒に働いていた人がいつの間にかいなくなり、窓から飛び降りた人は二度と姿を見ることはなかった。

1カ月後、昨年12月にタイ軍が国境紛争でカンボジアに爆撃を開始した隙に、エリックは脱走した。もっともつかの間の自由だった。別の詐欺拠点に売られた後、今年1月中旬に再び脱走した。

エリックは現在、カンボジア国内で途方に暮れている。ほかにも数千人の外国人が、特殊詐欺の大規模な取り締まりが行われるという噂が広がって施設から解放されたが、身動きが取れずにいる。

きっかけは1月初めに、カンボジアを拠点とする中国出身の実業家、陳志(チェン・チー)が逮捕されたことだ。米司法省が「サイバー詐欺帝国の首謀者」と呼ぶ陳を追って数カ月前から国際合同捜査が行われていた。

中国に移送される「詐欺帝国の首謀者」陳志(26年1月)

中国に移送される「詐欺帝国の首謀者」陳志(26年1月) CCTVーREX/AFLO

急成長しているオンライン詐欺産業は年間数十億ドルの不正な利益を生み出し、数十万人が東南アジアやその他の地域の恐ろしい「詐欺工場」に人身売買されている。

詐欺グループの拠点が特に多いカンボジアに対し、国際社会から取り締まりを強化するよう圧力が高まっている。当局は関連施設を急襲したこともあるが、これまでは限定的な作戦で形だけに見えた。

それでも今回は規模が違った。1月に複数の施設が突然、働かせていた人々を解放し、詐欺業界とつながりのあるカンボジアの有力実業家と複数の高官が逮捕された。

国際機関が支援を拒否

一斉に逃げ出した人の多くは、パスポートもカネも行く当てもない。インドネシア大使館によると3400人以上の同国民が領事支援を求めている。ウガンダとガーナはそれぞれ約300人、ケニアは200人以上が足止めされているとみられる。

中国とインドネシア大使館は、国外退去を待つ自国民の処遇についてカンボジア政府と交渉した。ケニアは書類不備やオーバーステイに関する罰金の免除を取り付けた。

しかし、多くの人がカンボジアの官僚機構に門前払いされている。特にアフリカ人は、カンボジアに外交代表部がない国々の出身者も多く、国際機関からは「資源の制約」や現地の規制を理由に支援を拒否されている。

カンボジア当局は今回の大規模な摘発を「過去との決別」と位置付け、4月までに国内の特殊詐欺ネットワークを根絶させると宣言した。ただし、持続的な政策転換につながるかどうかは不透明だ。

詐欺グループの拠点から逃げてきた人々の訴えは、国際社会で無視されてきた。彼らを助けることができなければ、詐欺師が笑い続けるだけだ。

The Conversation

Ivan Franceschini, Lecturer, Chinese Studies, The University of Melbourne; Charlotte Setijadi, Lecturer in Asian Studies, The University of Melbourne, and Ling Li, PhD Candidate in Technology Facilitated Modern Slavery, Ca' Foscari University of Venice

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


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