台湾人が中国に「強制送還」されている...カンボジアの特殊詐欺摘発は「国家ぐるみ」の演出か?
Deported to the Wrong Country

特殊詐欺に関わったとしてプノンペン国際空港から中国に送還される中国人と台湾人の容疑者(2016年) SAMRANG PRINGーREUTERS
<中国政府に配慮して特殊詐欺容疑者を中国へ移送。だが、その多くは人身取引によって強制的に加担させられている>
カンボジア当局は4月、首都プノンペンでオンライン詐欺の拠点を強制捜査し、180人近い台湾人を逮捕、中国本土に移送した。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がカンボジアを公式訪問する直前のことだった。
移送された人々の身元や正確な人数ははっきりしない。その理由は、カンボジアが台湾とは正式な外交関係にないこと、そしてカンボジア政府が発表した声明が短く素っ気ないものだったためだ。
当然ながら台湾政府は、強い抗議を表明した。台湾人の詐欺の容疑者が中国本土に移送されるケースは、かなり前から続いている。
しかし情報筋によれば、この一件には別の側面がある。逮捕された1人に面会したという台湾政府関係者はディプロマット誌に対し、中国に移送された多数の容疑者は、カンボジア当局が言うように詐欺グループに自発的に加わっていたのではなく、人身取引の被害者である可能性が高いと言うのだ。
同じ見方は、カンボジアで詐欺を強要されていた人々の救出に携わる専門家も示している。情報筋によれば、同様のケースはこれまで数百人に上るという。
カンボジアで長期政権を敷いたフン・センは、1997年のクーデターで権力を掌握すると、数週間後にはプノンペンにあった台湾の貿易事務所を閉鎖。中国に接近する一方で、西側諸国とは一層距離を置くようになった。