23年には中国で、メコン地域の詐欺組織による大規模な人身取引を描いた大作映画が公開された。脚本は実際の事件記録を基に書かれたという。カンボジアでは、この映画が上映禁止になった。

映画で人身取引を非難し、問題の深刻さを描いた中国も、その一方で容疑者と被害者をきちんとふるい分けていない。

シムズはこの背景に、強硬姿勢を取っているという体裁を整えつつ、犯罪の背後にいるエリート層への影響力を保ちたい中国の法執行機関の思惑があると指摘する。

シムズの報告書によれば、メコン地域(主にミャンマーとカンボジア)の詐欺拠点から排除され、強制送還された中国人は約6万人に上る。このうち人身取引の被害者だと正式に認定された者は、ごくわずかだ。

詐欺拠点で台湾人や中国人、その他の国籍の人々が相次いで逮捕され、強制送還されている現状は、犯罪者と被害者のふるい分けが全く不十分だという重大な問題を浮き彫りにしている。

専門家らは人身取引の被害者を認定する態勢を強化することが急務であり、被害そのものを減らす措置も急がなくてはならないと訴える。世界の分断がいかに深まろうとも、これは待ったなしの課題だ。

From thediplomat.com

ニューズウィーク日本版 米イラン合意 トランプの密約
2026年6月30日号(6月23日発売)は「米イラン合意 トランプの密約」特集。

イランが有利に見える14項目の覚書にはアメリカとの「談合」が隠されている

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます